I.「高次脳機能障害」とは?
当事務所は、平成12年に自賠責で高次脳問題が取り上げられる以前より、高次脳機能障害の問題の存在を認知しており、被害者の方々のお手伝いをしてまいりました。
その案件は現在500件を超えております。
この高次脳機能障害は、交通事故による頭部外傷、水難事故による低酸素脳症、そのほか、脳血管障害や心筋梗塞など、さまざまな原因によって脳に損傷を受けた場合に発症する後遺障害です。交通事故の場合、ケガの治療は終了したのに、「事故前とは人格が変わってしまった」「以前とは違う行動をとる」といった異変を感じた場合は、すみやかに専門病院で診断を受けてください。高次脳機能障害と診断された場合は、高度な専門的知識を有する弁護士と医師の協力による立証活動が不可欠です。
私どもは、この損傷の案件を数多く手がけて、症状、年齢、裁判所所在地を問わず最大の成果をあげております。どうぞご相談してみて下さい。
II. 高次脳機能障害者に見られる主な症状や行動(被害者のご家族から寄せられた声をご紹介します)
外見からはその障害の深刻さが理解されにくい高次脳機能障害。事故前と事故後の生活レベルの差を立証するのはとても困難ですが、以下のような症状に気づいたら、一人で悩みを抱え込まず、早めに専門医に相談してください。
1.能力の低下
●記憶障害
- ・5分前に話した内容を忘れるなど、記憶力に著しい障害がある
・買い物を頼んでも、必要なものを買い忘れてしまう
・物忘れを防ぐためにメモをしていても、メモの存在自体を忘れてしまう
●注意障害
- ・2つ以上のことを同時におこなうことができない
・作業ミスや勘違いが連続してしまう
・理由もなくガスを点火する。ガスの火をつけても消し忘れる
●半側空間無視
- ・自分で車椅子を動かすことはできるが、物にぶつけるなど安全に動かすことができない
・片側にあるものにぶつかってしまう
●失語症
- ・うまく話すことができまい
・同じ言葉を何度も繰返す
・本が読めない
●社会的行動障害
- ・対人関係がうまくいかない。維持できない
・意志の疎通がうまくできない
・羞恥心がなくなり、他人の前で陰部を出したり、掻いたりすることがある
・こだわりが強く情緒が不安定で、暴力的になる
・電気のスイッチ類を目につくまま衝動的に押してしまう
・必要のないものを購入したり、訪問販売の営業トークに乗せられ高額な物品を契約したりする
・刃物などで自分の身体を傷付ける、いわゆる自傷行為がみられる
●地誌的障害
- ・通いなれた道で迷子になってしまう
・自分がいる場所がわからない
●集中力の低下
●病識の欠如
- ・自分の後遺症を認識せず、自ら正常であると言い張る。リハビリや通院を 拒否する。
・他人の非常識なふるまいにつき、自分への病態を忘れ、抗議などしてトラ ブルになる。
●その他
- ・てんかん発作がおこる(外傷性てんかん発作の可能性があります)
・手や足を意味もなくパタパタ動かし、それを止めることができない「常動運動」という障害がある
・嗅覚が失われ、頻尿、大便失禁などによって不衛生な状態になる
・嗅覚が失われ、ガスが漏れていても気がつかない
・味覚がなくなり、食品に異常が発生していても分からない
2.性格の変化
●暴言、暴力
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・家庭内で弱い者、母、弟、妹に対して理由もなく暴力をふるう
・暴力までいかなくても暴言をはく。
・短気な性格になり少しのことで切れてしまう。
・物に対して暴力をふるい器財をこわす。
・少しのことでイライラする。
●うつ傾向、無気力化
-
・落ち込みが激しく、うつ傾向がある。
・リハビリの必要性を言われても、無気力で応じない。
・外出を嫌がって、家の中に閉じこもる傾向。
●他者依存、甘え、幼児化
-
・言動、行動が子どもっぽい。親に甘える。ぬいぐるみに関心をもつ。
・親に依存して、一人でやろうとしない。
・自発性が無くなった。
・幼児化することにより、性的な羞恥心が無くなり、人前で裸を平気でさらす等の行動をとる。
●思い込み、こだわり、自己中心的
-
・自己中心的になる。他人に配慮しない。他人を平気で傷つける。
・失敗は全て人のせいにする。自分の責任を認めない。
・思い込みが激しく、人の意見を全く聞かない。
・こだわりが強く、日常生活でもみられる。
・気分も自己中心的で、約束もすぐやぶる。
●根気、持続力が欠如
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・根気が無くなってすぐ投げ出す。
・一つのことをやる持続力が無く、すぐ飽きてしまう。
・面倒くさがりになって、投げやりである。
・集中力の低下
●金銭管理ができない
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・お金を持たせると、全て使い切ってしまう。
・他人に平気でおごったり、貸したりしてしまう。
●友人関係
- ・友人関係がどんどん無くなってくる。
3.その他
●てんかんが発症することがある。投薬が必要。
●顔周りの神経に損傷がみられる。
-
・眼については、視野狭窄、複視
・鼻については、嗅覚の喪失
・味覚については、味覚の喪失
・耳については、耳鳴り、聴覚の低下
●目まい、平衡感覚の喪失が発生することがある。
III.「高次脳機能障害」が認定される条件とは?
① 事故の際、脳に大きなダメージがあった
「高次脳機能障害とは?」でも説明しているとおり、高次脳機能障害が発症する原因は、脳に対する強い衝撃にあります。たとえ頭蓋骨に骨折がなくても、顔面に強い衝撃を受けていれば、それも十分な要件となる可能性があります。脳に直接的な衝撃を受けていない場合は、高次脳機能障害ではないと思われます。(ただし、手術による脂肪塞栓等、脳血流の極端な低下、低酸素脳症を除きます)
② 事故後に意識障害があった
少なくとも、事故から6時間以上、通常は1日以上の意識障害がなければ、高次脳機能障害は発症していないと判断されます。つまり、意識障害があるとすれば、事故当日の入院は後遺障害認定において必須の条件となります。
意識障害のレベルや期間については、当時のカルテを参考に判断されますが、意識障害がみられなかった場合でも、画像上で脳に傷害があることが明かな場合は、例外的に高次脳機能障害と判断される場合もあります。
③ 脳の画像にダメージの痕跡がある
診断書に「脳挫傷」「頭蓋骨骨折」といった傷病名が記入されていれば、必ずしも脳の画像が必要はありませんが、脳の画像診断結果をもとに、脳に対する衝撃がどの程度加わったのかが証明されれば、「高次脳機能障害」として正しい認定を受けやすくなります。
④ 事故後早い時期から高次脳機能障害の症状が出ていた
入院中、もしくは退院後すぐの受傷後間もない時期に、高次脳機能障害とみられる上記のような症状が見られた場合は、家族が十分にチェックをした上で、その内容を病院の医師に伝え、高次脳機能障害によるものかどうかを確認してもらうことが大切です。後遺障害を判断する際には、この時点で医師によって確認されているか否かが、とても重要なポイントとなります。
IV.「脳挫傷・高次脳機能障害」の被害者と家族が直面する3つの問題
① 病院で適切な診断と治療が受けられない
高次脳機能障害の診断には、専門的な医学知識が必要です。患者は多くの場合、外見的に健常者と同じに見えるため、高次脳機能障害について十分な知識や理解のない医師や医療機関にかかると、症状を見逃されたまま放置され、適切な診断を受けることができないことも少なくないのです。最悪の場合、事故直後の急性期を過ぎると治療を打ち切られ、リハビリも受けられないという、気の毒なケースも多く見受けられます。残念なことですが、わが国ではいまだに、高次脳機能障害に対して十分な理解のない医療機関が圧倒的に多いのが現状です。医療機関選びは納得のいく解決を獲得するためのファーストステップです。
当事務所では、信頼できる専門的な医療機関の情報を多数収集しております。病院探しでお困りの方はお早めにご連絡ください。
② 後遺障害の重さが正当に評価されない
医師や医療機関が「高次脳機能障害」という後遺障害の現実を十分理解をしていない場合、後遺障害診断書にはその深刻さが明記されません。当然ながらそのような診断書を自賠責保険に提出すれば、等級認定は低く見積もられ、結果的にその後の損害賠償の話し合いにも大きな影響を及ぼしてしまいます。後遺障害が正しく評価されないことで、被害者とその家族は生涯にわたって経済的にも精神的にも苦しみを引きずる結果になりかねないのです。そうした結果を回避するためにも、当事務所は専門医と連携し、賠償請求の前の段階から解決に向けてのお手伝いをしていきたいと思っております。
③ 介護料 が認められにくい
寝たきり状態である「遷延性意識障害」と比較した場合、自分で自由に動き回ることのできる「高次脳機能障害」の被害者の介護は、別の意味で大変な苦労と緊張を伴います。ところが、2級以下の高次脳機能障害の場合、加害者側は、「随時介護で事足りる」、つまり、「必要なときにときどき介護すればよい」と主張してきます。こうした場合でも、被害者本人が事故前と事故後とでどれだけ変化があったのか、また日常生活がいかに困難になったかを立証し、介護者の精神的負担や介護に要する労力を緻密に主張することで、「常時介護」が必要と認める画期的な判決も多数出ています(「随時」と「常時」では、介護料に極めて大きな開きが出ます)。また、高次脳3級や5級の介護料も、立証の仕方によっては認められることもありますので、ぜひご相談ください。
V. 高次脳機能障害が自賠責及び裁判所で適切に認定されるための具体的な準備とは?
[はじめに]
- (1)高次脳機能障害が正確に認定されるのは、外側から見ることが出来ないことから、診断書を含めた各書面で正確に症状を伝えることが最も大切です。
- (2)病状についての①の医師の診断はもちろん、日常の状態を正確に反映する必要がありますので、②の家族の報告、③④の職場や学校の報告が極めて重要となります。よく留意して下さい。
以下、ご説明します。
① 医師の正確で詳細な診断書の作成
Ⅳで述べたように、高次脳機能障害を正確に判断出来る医療機関は極めて限られております。まず患者は、適切に高次脳機能障害を診断出来る医療機関に受診し、そこで後遺症の診断をしてもらう必要があります。
その場合でも、担当の医師に患者側から正確な情報を伝える必要があります。担当の医師の診療が、どうしても短時間に限定されるからです。
また、患者だけの受診は、患者に病識がない場合には、「患者が側からの正確な情報」が得られないばかりか、患者自身から病識が無い情報(自身に高次脳機能障害が存在していない等)が伝わって、医師の判断に影響を及ぼす場合があるので注意が必要です。
この様な場合には、患者の家族の同席の上での受診が重要となります。
② 家族もしくは、同居人の具体的な状況説明書(日常生活状況報告)の添付
高次脳機能障害の患者は、外見からは病態が判断しにくい場合が極めて多いのが特徴です。
このような状況のままですと、高次脳機能障害の後遺症手続きについては、正確な判断が不可能となります。
自賠責においても「日常生活の状況報告」を家族に記載させているのは、実は家族や同居人が一番症状を認識しているからです。
このことは、この家族・同居人の報告こそが、極めて重要な判断理由であることの証明です。
この点につき、「日常生活の状況報告」のみで足りるのか、別のより詳細な文章を加える必要があるのか、加えるとすれば何をどのように記載するのかは、極めて重要なこととなります。
この記載についても、当事務所では患者側と十分な打合せを行っております。是非ご相談下さい。
③ 就労していたのであれば、職場での具体的な状況説明書の添付
④ 就学児童もしくは生徒であれば、学校の担任教師の具体的な状況説明書の添付
高次脳機能障害の患者が、勤労者であれば職場に復帰したり、また児童,学生であれば学校に復学したりすることは多く見受けられます。
高次脳機能障害の方々も、一般の方と同様に日常生活を送るわけですから、当然に職場復帰、学校復帰があり得るでしょう。
とすると、②で述べた自宅での状況と同じように、職場や学校での生活状況,活動状況が問題となるのは当然です。更に詳しく言えば、②の自宅での生活よりも、第三者の証言となりますのでより信用性は高くなります。
ここでの詳細な報告もまた高次脳機能障害認定の重大な要素となります。
特に学校生活については、自賠責もこれを要求しております。また、職場についても、自賠責に詳細な報告を出すことで有意な結果が得られる場合があります。他方、裁判においては、いずれも必要となります。
ここでの詳細な報告もまた高次脳機能障害認定の重大な要素となりますので、自賠責もこれを要求しております。
問題は、理解が不十分なままで報告書を作成すると、高次脳機能障害自体が否定されることとなります。現にそのような実例も存在しております。
職場の担当の方や学校の先生に、医師や家族から十分な情報の伝達をなすことが不可欠です。この点についても十分ご相談下さい。
VI. まとめ
この障害は、等級を問わず患者の方々には、大変不自由な後遺症が残存します。住宅の改修など必要に応じ、当然賠償の対象になります。また、1級,2級,3級,5級の方々には、多くの場合将来も介護が必要となりますが、この将来介護料の認定には極めて緻密な立証が必要となります。なお当事務所、これまで高次脳機能障害の方々の事件を500件以上担当しております関係上、予後のリハビリや就労につき、十分なノウハウも持っております。
お役に立てると思いますので、是非ご相談下さい。
当事務所がこれまでに獲得した「高次脳機能障害」の判例
- 画期的判例:高次脳機能障害
- 事故によって頭部に強い衝撃を受けた方には、「高次脳機能障害」という後遺障害が残っている可能性があります。身体に受けた傷の治療は終了し、機能もある程度回復しているのに、「事故前とは人格が変わってしまった」「ひとりで生活できなくなってしまった」など、精神的な部分での異変を感じた場合は、すみやかに専門病院で精密な検査を受けてください。高次脳機能障害は、外見からはその障害の深刻さが理解されにくく、健康だった事故前と事故後の生活レベルの差を立証するのは非常に困難です。高度な専門的知識を有する弁護士と医師の協力による立証活動が不可欠です。
その他の後遺障害の「画期的判例」はこちらをご覧ください
- 画期的判例:遷延性意識障害
- 「寝たきり」とも言われる最も重篤な後遺障害です。脳に大きなダメージを受けた被害者の多くは寝たきりで、他者の介護を受けなければ生きて行くことができません。高次脳機能障害と比べると障害の程度の立証は比較的容易ですが、加害者側は「寝たきり者は長く生きられない」、つまり、「被害者本人の余命は短いので、将来介護費は平均余命まで必要はない」と主張してくることが少なくないのです。しかし、これは極めて非人道的で一方的な主張だと言わざるを得ません。たとえ寝たきりであっても、健常者と同じように長生きすることは可能です。いかに良好な介護状態が維持できるか、また介護にあたる家族にも大切な人生があるということを、裁判所に理解してもらうための緻密な立証が必要です。
- 画期的判例:重度脊髄損傷
- 「脊髄」とは、脳と身体をつなぐとても重要な中枢神経です。事故などでこの「脊髄」が傷ついてしまうと、脳からの指令が正確に伝わらなくなり、多くの場合、身体に麻痺が残ってしまうため、車いす生活や寝たきりの生活を余儀なくされます。しかし、麻痺だけではなく、脊髄損傷が原因で内臓にも弊害が出る場合が少なくありません。最近ではMRI等の画像診断でも確認されにくい中心性脊髄損傷という症例もあり、苦しんでおられる被害者の方が多いのが実情です。脊髄損傷による後遺障害の診断には、非常に専門性が必要ですので、十分な経験と実績を積んだ弁護士や医師の協力を仰ぐことが必要です。
- 画期的判例:死亡事故
- 何より大切な「命」が奪われてしまう死亡事故、それは、お亡くなりになった被害者本人にとっても、ご家族にとっても、最も辛い最悪の事態です。死亡事故の場合、被害者は当事者でありながら、事故がどのように起こったのかを説明することができません。一方、加害者の多くは自己防衛的な供述を行いがちです。そのため、加害者側の一方的な言い分が独り歩きし、被害者側が過失割合において不利になったり、ときには被害者なのに加害者として扱われることも少なくありません。まさに「死人に口なし」です。一度かたち作られた警察の捜査結果をくつがえすことは大変困難ですので、こうした事態を防ぐためにも、事故後できるだけ早い段階で交通事故に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。当事務所ではまず事故の真実をしっかり究明し、その上で、被害者とその家族が被った損害を、年齢、生前の職業や収入などをもとに緻密に立証しております。
- 画期的判例:上下肢切断・機能障害他
- ここでは、上肢・下肢の障害、関節の機能障害等、整形外科的な後遺障害に係る裁判例を紹介しております。いずれも、被害者の方の不自由さを最大限裁判所に訴えて、十分な成果をあげたものです。ご検討ください。