I. はじめに「重い脊髄損傷」「中心性頚髄損傷」の解決法とは?
当事務所では、「重い脊髄損傷」「中心性脊髄損傷」の案件を、100件以上担当させて頂いております。この障害は、脳外傷と異なり、首から下の神経の各部位が損傷するものです。損傷部位から下位の神経に大きな損傷が残るため、重度の運動障害が生じる重大な障害です。私どもは、この損傷の案件を数多く手がけて、症状、年齢、裁判所所在地を問わず最高の成果をあげております。どうぞご相談してみて下さい。
II. 重度脊髄損傷(中心性頚髄損傷を含む)とは
① 脊髄とは、脳から背骨の中をとおって延びている太い神経のようなもの。脳から送られるさまざまな指令は、この脊髄をとおって全身に枝分かれした神経に送られていくわけですが、脊髄が事故などで傷ついてしまうと、残念ながら二度と元には戻らず、損傷部分から下部には完全な麻痺が残ってしまいます。脊髄の損傷部分が上になればなるほど麻痺の範囲は広くなると言われており、こうした状態を「重度脊髄損傷」と呼んでいます。
脊髄損傷の場合は、意識ははっきりしていても手足が動かなくなるため、車椅子や寝たきりの生活を強いられます。また、肺機能障害や体温調節障害、じょくそう(床ずれ)など、全身に様々な悪影響が発生するため、手厚い介護も必要です。住宅改造費や介護雑費等も後遺障害のなかでは高額になる場合が多いので、日々の領収証等の保管はしっかり行う必要があります。
② ただし、脊髄損傷の中には、首の骨(頚椎)や背骨(脊椎=胸椎、腰椎、仙椎)、つまり「骨」に損傷が見られないにもかかわらず脊髄(内側の神経部分)に損傷を受け、上肢の麻痺や膀胱・直腸障害等の重い後遺障害が現われるケースがあります。
その各々の損傷により機能が失われる場所が異なりますが、これらは「中心性脊髄損傷」もしくは「中心性頚髄損傷」と呼ばれており、外傷が比較的軽微と判断されるためX線などを撮っても画像に現れないため「軽い頚椎捻挫」程度で見逃されることが多く、治療を短期間で打ち切られた被害者は大変辛い思いを強いられがちです。専門医でMRIを撮って損傷を明確にする必要があります。
以下、重度脊髄損傷を始めに説明し、次に中心性頚髄損傷を説明します。
III. 重度脊髄損傷について
重度脊髄損傷には、①頚椎損傷、②胸椎損傷、③馬尾損傷 のおよそ3形態があります。
1. 損傷部位と症状について
① 頚椎損傷について
頚椎損傷は、首の部分にかかる脊髄神経の損傷です。
この神経の損傷では、胸から下の体幹部の運動が麻痺しますが、頚椎の何番目の損傷かによって、両手の動きに差が出てまいります。頚椎の下の方の損傷では自分で車椅子がこげますが、上の方の損傷ですと指の動きや手の運動が難しくなります。排泄機能は不能となります。
② 胸椎損傷について
胸椎損傷は、胸部の脊髄神経の損傷です。
胸椎の何番目かによって、体幹の動きの種類が違ってきます。
損傷部位から下には麻痺が残りますが、この部位の損傷は手が動きますので、車椅子がこげます。
排泄機能は不能となります。
③ 馬尾損傷について
腰椎の損傷で、最下位の脊髄の損傷を馬尾損傷といいます。
この損傷では、下半身が全て麻痺することはありません。
損傷の部位によって下半身に一部麻痺が残ります。
損傷の部位により、排泄も不自由になることがあります。
2. 後遺症等級について
① 頚椎損傷
別表1の1級になりますので、自賠責上、最大4,000万円が給付されます。
② 胸椎損傷
上記頚椎損傷と同じ、別表1の1級となります。自賠責上、最大4,000万円が給付されます。
③ 馬尾損傷
麻痺の症状に応じ、別表2の3級、5級、7級、9級のいずれかになることが多いと思われます。
等級に応じ自賠責上、最大2,219万円、1,574万円、1,051万円、616万円となります。
3. 賠償について
ここでは、①頚椎損傷・②胸椎損傷をまとめて先に説明し、③馬尾損傷については別に説明します。
(1) 頚椎損傷・胸椎損傷の賠償について
賠償は大まかに分けて、①逸失利益、②慰謝料、③将来介護料、その他の費用に分けられます。詳説します。
① 逸失利益
この損傷は、原則100%の労働能力の喪失率が認められます。
即ち年収の100%が、原則67歳まで認められることとなります。
なお高齢者の場合は、67歳以上まで認められます。
② 慰謝料
慰謝料は、a.後遺症慰謝料、b.傷害慰謝料に分けて認められます。
a.後遺症慰謝料について
最大級の慰謝料として、原則として本人分2,800万円以上、及び近親者の慰謝料が認められます。
b.傷害慰謝料
これも最大級の慰謝料が計算上認められます。
③ 将来介護料
この介護費用は、a.頚椎とb.胸椎では多少ですが違いがあります。
a.頚椎損傷の場合
頚椎損傷の場合は、体幹の麻痺と下半身の麻痺に加えて、損傷によっては手の動きに制限を受けますので、手の麻痺が重い場合は日額2万円以上、手の麻痺が比較的軽度な場合には1万2,000円から1万5,000円の介護料が認められます。
b.胸椎損傷の場合
胸椎損傷の場合は、損傷部位により下半身麻痺以外に体幹の麻痺の程度が違いますので、この体幹麻痺の程度で日額の介護料に違いが出ます。日額1万円から1万5,000円くらいの幅の違いがあります。
④ その他の費用
その他の費用としては、(i)車椅子、(ii)介護ベッド、(iii)介護雑費(オムツ代,介護パンツ等)、(iv)住宅改造費などがあります。
◎ここでは、一番高額な住宅改造費の説明をします。
住宅改造費は、原則で被害者の使い勝手の良い限度で認められます。
障害の程度に応じ改造の程度も異なりますが、600万~1,100万円位の幅があります。
(2) 馬尾損傷について
上記 頚椎損傷・胸椎損傷と項目は一緒ですが、障害の程度で認められる金額が異なります。
(上記 頚椎損傷・胸椎損傷の項も参照して下さい。
① 逸失利益
障害等級に応じ、労働能力喪失率が3級は100%、5級は79%、7級は56%、9級は35%となります。
原則67歳まで認められるのは上記と同じです。
② 慰謝料について
後遺症慰謝料は、等級に応じ違いがあります。
3級は1,990万円、5級は1,400万円、7級は1,000万円、9級は690万円です。
傷害慰謝料は、上記頚椎損傷・胸椎損傷と同じ最高額となります。
③ 将来介護料について
将来介護料については、3級と5級では立証により認められる可能性があります。
日額2,000円から5,000円程度となります。
④ その他の費用
症状によって認められる費用があります。
十分な検討を要するところです。
IV. 中心性頚髄損傷
1. 損傷部位と症状について
(1) 損傷部位
上記の重度脊髄損傷は、頚椎もしくは胸椎に骨折が生じ、その結果として脊髄が断裂した結果、生じた障害です。
これに対して中心性頚髄損傷は、骨傷は存在しないか存在しても僅かですが、衝撃により脊柱内部の頚髄が損傷する障害です。
それ故、X線では損傷が明らかになりません。MRIで診断します。
(2) 症状
① 下肢に比して上肢の麻痺が重度です。
② 麻痺により手の握力が大幅に低下します。
③ 冷水に触ると灼熱感があるなど多彩な感覚障害などが表れます。
④ 排泄障害も表れることがあります。
⑤ 下肢の麻痺は改善されることがありますが、上肢と排泄の障害は残存します。
2. 後遺症等級について
まれに1級や2級の障害も生じますが、多くは3級,5級,7級,9級の障害が残ります。
3. 賠償について
上記、重度脊髄損傷とほぼ同じですので参照して下さい。
V. まとめ
この障害は、等級を問わず患者の方々には、大変不自由な後遺症が残存します。住宅の改修なども必要に応じ、当然賠償の対象となります。
とりわけ、1級、2級、3級の後遺症の方々は、自宅改修が必要不可欠となりますが、それには大変な費用がかかります。この費用をどうするかという難しい問題もありますので、早急の弁護士対応が必要となります。
また、その他の等級認定の可能性がある方々も、十分な後遺症等級を確保するために、早い段階での弁護士の対応が必要となりますのでご留意下さい。
VI. 自宅介護の際の福祉によるサポート
① 介護保険(65歳以上適用)
ヘルパー費用30万円分の補助
※デイサービス、訪問入浴も可
② 総合支援法(65未満)
サービス内容としては、上記①とほぼ同等
(金銭的には介護保険を上回る給付がなされている)
③ 自賠責(ナスバ)の援助
(介護保険使用の場合は不可)
- 特Ⅰ種(最重度)
- 無条件に8.2万円位 実費領収書をつけて21万円位
- 一種(常時要介護)
- 無条件に 7万円位 実費領収書をつけて16.5万円位
- 二種(随時要介護)
- 無条件に3.5万円位 実費領収書をつけて8万円位
いずれも実費の補助
④ 障害年金等
VII. 賠償の流れ
① 症状固定後の流れ
症状固定後は、患者側から、まず自賠責に後遺症の被害者請求をします。これは、相手の保険会社に関係なく、自賠責に後遺症相当分の金額を請求するものです。
等級に応じ、1級は4,000万円、2級は3,000万円、3級は2,219万円、5級は1,574万円、7級は1,051万円などが、過失が大きく無ければ給付されます。
この給付が入れば、患者側は財政的に一安心となります。
なお入金するまでの期間は、請求から4~5ヶ月かかります。
② 自賠責請求後の流れ
自賠責を取得して、財政的に安心した上で、最終的な賠償を請求することとなります。
請求の方法は、①示談もしくは②裁判等の手続きの2つです。
いずれの解決もあり得ますが、金額に大きな差が出る可能性がありますので、慎重な検討が必要です。
③ 具体的な解決による違いについて
④ 具体的な賠償までの流れについて
個々の手続きの間の所要期間につきましては、怪我の程度、書類の準備で異なりますが、迅速な解決を心がけております。
当事務所がこれまでに獲得した「重度脊髄損傷」の判例
- 画期的判例:重度脊髄損傷
- 「脊髄」とは、脳と身体をつなぐとても重要な中枢神経です。事故などでこの「脊髄」が傷ついてしまうと、脳からの指令が正確に伝わらなくなり、多くの場合、身体に麻痺が残ってしまうため、車いす生活や寝たきりの生活を余儀なくされます。しかし、麻痺だけではなく、脊髄損傷が原因で内臓にも弊害が出る場合が少なくありません。最近ではMRI等の画像診断でも確認されにくい中心性脊髄損傷という症例もあり、苦しんでおられる被害者の方が多いのが実情です。脊髄損傷による後遺障害の診断には、非常に専門性が必要ですので、十分な経験と実績を積んだ弁護士や医師の協力を仰ぐことが必要です。
その他の後遺障害の「画期的判例」はこちらをご覧ください
- 画期的判例:高次脳機能障害
- 事故によって頭部に強い衝撃を受けた方には、「高次脳機能障害」という後遺障害が残っている可能性があります。身体に受けた傷の治療は終了し、機能もある程度回復しているのに、「事故前とは人格が変わってしまった」「ひとりで生活できなくなってしまった」など、精神的な部分での異変を感じた場合は、すみやかに専門病院で精密な検査を受けてください。高次脳機能障害は、外見からはその障害の深刻さが理解されにくく、健康だった事故前と事故後の生活レベルの差を立証するのは非常に困難です。高度な専門的知識を有する弁護士と医師の協力による立証活動が不可欠です。
- 画期的判例:遷延性意識障害
- 「寝たきり」とも言われる最も重篤な後遺障害です。脳に大きなダメージを受けた被害者の多くは寝たきりで、他者の介護を受けなければ生きて行くことができません。高次脳機能障害と比べると障害の程度の立証は比較的容易ですが、加害者側は「寝たきり者は長く生きられない」、つまり、「被害者本人の余命は短いので、将来介護費は平均余命まで必要はない」と主張してくることが少なくないのです。しかし、これは極めて非人道的で一方的な主張だと言わざるを得ません。たとえ寝たきりであっても、健常者と同じように長生きすることは可能です。いかに良好な介護状態が維持できるか、また介護にあたる家族にも大切な人生があるということを、裁判所に理解してもらうための緻密な立証が必要です。
- 画期的判例:死亡事故
- 何より大切な「命」が奪われてしまう死亡事故、それは、お亡くなりになった被害者本人にとっても、ご家族にとっても、最も辛い最悪の事態です。死亡事故の場合、被害者は当事者でありながら、事故がどのように起こったのかを説明することができません。一方、加害者の多くは自己防衛的な供述を行いがちです。そのため、加害者側の一方的な言い分が独り歩きし、被害者側が過失割合において不利になったり、ときには被害者なのに加害者として扱われることも少なくありません。まさに「死人に口なし」です。一度かたち作られた警察の捜査結果をくつがえすことは大変困難ですので、こうした事態を防ぐためにも、事故後できるだけ早い段階で交通事故に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。当事務所ではまず事故の真実をしっかり究明し、その上で、被害者とその家族が被った損害を、年齢、生前の職業や収入などをもとに緻密に立証しております。
- 画期的判例:上下肢切断・機能障害他
- ここでは、上肢・下肢の障害、関節の機能障害等、整形外科的な後遺障害に係る裁判例を紹介しております。いずれも、被害者の方の不自由さを最大限裁判所に訴えて、十分な成果をあげたものです。ご検討ください。