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大逆転事案(刑事裁判で赤とされた被害者の信号をひっくり返した事案)

大阪地方裁判所管轄内

■遷延性意識障害(判例051)
■後遺障害等級:1級 確定年:2020年 和解
■大阪地方裁判所管轄内

被害者の状況

①19歳・男性(会社員)
男性 会社員(事故時19歳、症状固定時21歳)
右折自動車(加害者)と直進バイク(被害者)の事故
遷延性1級

認められた主な損害費目

治療費

約760万円

傷害慰謝料

397万円

休業損害

約330万円

逸失利益

約8,340万円

将来介護料

約1億3,780万円

後遺障害慰謝料

2,800万円

福祉器具購入費用

約340万円

介護雑費

約680万円

住宅建築費

約1,000万円

後見関連費用

約410万円

その他

約430万円

損害額

約2億9,270万円

過失相殺25%控除

-約7,320万円

人身傷害保険金控除

-約2,680万円

*1)調整金

約3,530万円

近親者慰謝料

600万円

最終金額

約2億3,400万円

*1)調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当
*2)人身傷害保険金1億円を加えて,総額約3億3,400万円を獲得した。

詳細

加害者の主張

刑事裁判において証言した目撃者によれば,被害者は赤信号で交差点に進入しており,加えて速度超過も認められる。速度超過により赤信号で進入してきた被害車両を回避することは不可能であり,青信号で右折した加害者に過失は認められない。
なお,実際に,刑事事件の判決でも「被害者は赤信号で交差点に進入した」と明確に認定されている。

裁判所の判断

目撃者の証言内容を前提にすると,本件事故直後に複数の車両が赤信号で交差点に進入したことになるが,本件事故発生直後であるにも関わらず,複数の車両が対面信号表示に従わずに進行したとは考え難い。
また,当該目撃者は,本件事故の直後,警察官に対し,「後方から衝突音を聞いて振り向いた」と説明しており,これによれば本件事故の瞬間を目撃していない可能性が高い。そうすると,事故の瞬間を見ていたとする刑事裁判における目撃者の証言は変遷し,疑わしいと言わざるを得ない。
以上より,目撃者の証言を排斥し,被害者の青信号進入を前提に,25%の過失相殺を相当とする。

【当事務所のコメント/ポイント】

1はじめに

本件は,刑事裁判で赤色と明確に認定された被害者の信号について,民事裁判で青色と認定された大逆転事案である。

2証拠収集

刑事判決という裁判所の判断を覆すためには,それだけこちらに有利で確かな証拠を収集しなければならなかった。
本件では,不可解なことに,信号の色が問題になっていたにも関わらず,刑事裁判では交差点の信号サイクルすら提出されていなかったことから,本件事故現場の信号サイクルを独自に取り付けた。
また,刑事裁判における目撃者の証人尋問の中で,目撃者が実際には交通事故を目撃していないのではないかと窺わせる捜査報告書の存在が明らかになっていたが,肝心の捜査報告書が刑事裁判には提出されていなかった。そこで,当該捜査報告書についても,民事の裁判所を通じて取り付けたところ,「交通事故の瞬間は直接目撃していない」と明確に記載されていた。
なお,後者について,加害者が刑事起訴された事件において,検察官が刑事裁判に提出していない「不提出記録」を民事裁判の場に開示させることに成功した点に意義がある。この「不提出記録」は,通常の手続きでは開示されないものであるため,事前に検察庁の担当者と粘り強く交渉し,開示を認めさせた。

3民事裁判のポイント(刑事裁判で見落とされた点)

まず,防犯カメラ映像によれば,事故直後に交差点を直進通過する車両が3台存在していた。これらの車両を規律する信号は被害車両を規律する信号と同じであったから,この点だけをとっても「事故当時の被害者信号が青ではないか」という強い推認が働く。刑事判決では,当該3台の車両について全く触れられてすらいなかった。
次に,それとは別に,同じく防犯カメラ映像によれば,事故当時に右折待ちをしていた車両が存在し,やはり事故後に右折したという事実が認められた。これは,事故当時の信号が青だったからこそ右折待ちをし,その後に赤になったから右折できたのではないかという点で,やはり事故時の信号が青色であったことを推認させる。
つまり,当事務所では,刑事裁判では見落とされていた直進車両3台,右折車両1台の存在を防犯カメラ映像から割り出し,それと信号サイクルを照らし合わせることによって,被害者が交差点に進入したときの信号が青色であったことを証明することに成功した

4まとめ

警察や検察の捜査,刑事裁判の結果に疑問を持ち,又は信号の色に関して疑問を持っている被害者の方は,決して諦めずに弁護士に相談して欲しい。弁護士であれば取り付けることができる証拠,刑事裁判では提出されなかった証拠など,改めて事故を調査することによって真実を明らかにできるケースもある。
当事務所では,常時,数件の信号事案(当事者双方で信号の色が問題となる事案)を担当しているが,刑事処分が確定した後,改めて独自の調査を行うことによって,新たな目撃者が判明するケースがあるなど,捜査機関の捜査が万全ではないことを再認識させられることも多いのが実態である。