遷延性意識障害1級の事案においてきわめて高額な将来介護料約1億1,780万円(家族介護分日額1万円,職業介護人利用日は日額2万円)を獲得した事例。
横浜地方裁判所管轄内
■遷延性意識障害(判例035)
■後遺障害等級:1級1号 確定年:2016年 和解
■横浜地方裁判所管轄内
被害者の状況
①21歳・男性(アルバイト社員)
男性 受傷時21歳 アルバイト社員(正社員への雇用変更が予定されていた。)
原告が自転車を運転して交差点を青信号で直進中,同交差点を対向車線から右折してきた被告自動車に衝突された。
遷延性意識障害1級1号
認められた主な損害費目
休業損害 |
約540万円 |
---|---|
逸失利益 |
約9,360万円 |
将来介護費用 |
約1億1,780万円 |
住宅改修費用 |
約900万円 |
介護機器費用 |
約1,150万円 |
成年後見人報酬 |
約450万円 |
傷害慰謝料 |
約400万円 |
後遺障害慰謝料(近親者分含む) |
約3,400万円 |
損害額 |
約2億7,980万円 |
障害年金控除 |
-約160万円 |
過失10%控除後 |
約2億5,040万円 |
既払い保険金(任意)及び労災控除後 |
約2億3,830万円 |
自賠責保険金控除 |
-4,000万円 |
*1調整金 |
約5,520万円 |
*2最終金額 |
約2億5,350万円 |
*1調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当
*2自賠責保険金4,000万円を加えた総獲得額は約2億9,350万円である。
詳細
加害者の主張
①本件事故は,青信号直進の原告バイクと,同じ青信号で対向車線から右折しようとした被告車両の事故であるから,15%の過失相殺をすべきである。
②原告の事故当時の収入額は同年代の平均賃金より低く,将来収入が上がるかどうかは不明だったのだから,アルバイトとしての実収入額を基礎に逸失利益を算定すべきである。
③原告の将来介護費については,今後の余命について確実な予測ができないのだから,一括して被告が賠償することは不相当であるから,将来原告が存命中にわたり定期的に(例えば毎月1回等)一定額ずつ支払うという定期金方式による賠償とするべきである。
原告の反論
①事故当時被告が右折中,過度なものではないものの,交差点直近内側を通らずに早回り右折をしていた事実があるから,被告の過失は単なる通常の右折車以上に重く,過失相殺は高くても10%を超えない。
②原告は事故当時若年であり,将来の増収の蓋然性は認められる(現に,本来なら事故時点以降,正社員への契約変更が予定されていた。)。したがって,逸失利益は統計上の全年齢平均賃金を基礎に算定すべきである。
③原告は定期金方式による賠償を求めていないのだから,定期金賠償を求める被告の主張は認められない。もし原告の意に沿わず定期金方式による賠償を認めてしまった場合,将来被告側(保険会社側)の資力が悪化した場合,原告がそのリスクを負担してしまうことになりかねないから,原告の意に反して裁判所が定期金賠償を命ずることはできないと言うべきである。
・最終的にこの3点について原告の主張に沿った内容での和解が成立。なお,将来介護費用は,家族介護料(仕事の休日等)日額1万円,職業介護人を依頼する日については日額2万円とされた。
当事務所のコメント/ポイント
遷延性意識障害1級障害を負った被害者の将来介護費について,保険会社側は定期金賠償による支払い,つまり被害者の生存を定期的に確認しながら支払うという主張を行った。
これに対し我々は豊富な経験に基づき,定期金賠償によって被害者が負担することになるリスク(特に,将来保険会社側の資力が悪化した場合,賠償を受けられなくなるかも知れないリスクを被害者が負担するかも知れないことの不当性)を丁寧に論じた結果,裁判所は我々の主張を支持し,保険会社側の定期金賠償の主張を排斥した。
具体的な将来介護費用については,我々の丁寧な主張立証の結果,家族介護料(仕事の休日等)日額1万円,職業介護人を依頼する日については日額2万円という高額な水準を基礎に,高額な約1億1,780万円が認容された。
逸失利益(基礎年収)及び過失相殺についても,被告の主張に対して適切な法的知見に基づく指摘を加えた結果,保険会社側の主張を退けることができた。
以上の結果,総取得額は自賠責保険金を併せて約2億9,350万円ときわめて高額なものになった。
- 引用 -
遷延性意識障害1級の事案においてきわめて高額な将来介護料約1億1,780万円(家族介護分日額1万円,職業介護人利用日は日額2万円)を獲得した事例。