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子ども飛び出し無責を現場検証で逆転|遷延性意識障害|交通事故

一審 大分地裁管内 二審 福岡高裁 判決 最高裁追認

■遷延性意識障害(判例017)
■後遺障害等級:1級 確定年:2010年
■一審 大分地裁管内 二審 福岡高裁 判決 最高裁追認

被害者の状況

①7歳・男児(小学2年生)
② 道路を横断中、左方からの被告車両が衝突
③ 遷延性意識障害1級

認められた主な損害費目

将来介護費

約1億3,200万円

逸失利益

約5,800万円

将来介護機器代

約1,200万円

将来雑費

約900万円

介護住宅

約350万円

介護車両

約180万円

傷害慰謝料

約250万円

後遺障害慰謝料

約2,600万円

その他

約620万円

損害額

約2億5,100万円

過失30%控除後損害額

約1億7,600万円

両親慰謝料

約280万円

弁護士費用

約1,330万円

確定遅延損害金

約590万円

遅延損害金(2年10ヶ月相当)

約2,100万円

総計

約2億1,900万円

既払控除(治療費)

-約400万円

既払控除(自賠責)

-約4,000万円

最終金額

約1億7,500万円

詳細

加害者の主張

①「男児が飛び出したことが事故の原因だ」として免責を主張。仮に免責でなくとも、9割以上の過失相殺が認められるべきである。

②遷延性意識障害者の自宅介護は無理なので、住宅改造費は必要なし。

③男児の余命は40歳までと仮定して損害額を算出し、賠償金の支払いは定期金払いにすべきである。

裁判所の判断

①過失割合に関する主張に対し、当事務所は緻密な現場検証を行い、更に当時一緒にいた9歳の姉の供述も証拠として提出し、「男児は飛び出していない」と反論。その結果、判決では被告の主張を退け、男児の過失を3割と認定した。

②自宅での介護を希望していた両親の思いを汲んだ我々は、担当医との連携で自宅介護が可能なことや、自宅介護におけるメリットをしっかりと立証し主張。その結果、裁判所は自宅介護を前提とした高額な将来介護料を平均余命まで必要と判断し、それを前提として、住宅改造費も認められた。

③余命を短く見積もるという非人道的な主張に関して、当事務所は「丁寧なケアを続ければ遷延性意識障害者も長く生きられる」ということを医師の意見をもらって徹底的に立証。裁判所は被告の主張を却下した。

④定期金賠償についても裁判所は却下。被害者感情からすれば受け入れがたいものであり、一括払いでの判例が一般的になっている。

当事務所のコメント

①遷延性意識障害事案の多くがそうであるように、本件の場合も余命を短く見積もるという非人道的な主張が展開されたが、裁判所は医師の意見を尊重し、被告の反論を却下。この主張は、当事務所が既に多くの裁判で覆し、平均余命まで認める判例を勝ち取ってきた。

②自宅介護で万全のケアを続けていけば、遷延性の被害者であっても余命を全うすることは十分に可能なので、相手側の反論に屈せず、判例に基づいた主張をしっかりと行うことが大切だ。

③本件は、高裁、最高裁と、加害者側で上訴したが、全て棄却され、当方の主張どおりである第一審が確定した。

 

★ちなみに、自宅介護のメリットとは以下の3点である。

(1)事故前と同じく家族と共に過ごすことが被害者にとって最も自然な姿であり、憲法上の住居の自由も守られる(ノーマライゼーションという考え方)。また、遷延性意識障害者であっても意識はあるため、自宅に帰ることでさまざまな刺激が与えられ、症状が改善されるケースが多い 。

(2)自宅は施設よりも衛生的で、感染症の心配が少ない。

(3)マンツーマンの丁寧なケアができるため、じょくそうなど、余病の発生が防止できる。