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無責主張覆し原告過失分を人身傷害で補填|遷延性|交通事故

関東地方 2007年 確定(裁判所明記せず)

■遷延性意識障害(判例013)
■後遺障害等級:1級 確定年:2007年
裁判所認定額 約2億4,100万円
弁護士交代
■関東地方 2007年 確定(裁判所明記せず)

裁判所認定額 約2億4,100万円
弁護士交代

被害者の状況

①21歳・女性
② 被告(男性)運転の車両が狭路に入り、戻れない状態になったため、被告が被害者に指示し、被告車の横から運転席に上半身を乗り入れるような無理な姿勢でサイドブレーキを解除させたところ、下り勾配で車両が発進。そのはずみで被害者が家屋と車両ドアに挟まれ、外傷性窒息・中心性肝損傷・外傷性心肺停止状態に。蘇生後、低酸素脳症により、遷延性意識障害1級の障害を負った。
③ 自らの過失を認めようとしない被告男性の言い分に、被害者の両親は到底納得することができなかったが、損保会社もそうした思いを無視し続けていた。困惑した両親は、地元の弁護士に相談したが、その弁護士も被害者の過失は5割を下らないという方針のもとで訴訟を起こそうとした。しかし、その方針を受け入れられなかった両親は、悩んだ末にその弁護士を解任し、被害者の会を通じて当事務所に相談に来られた。交通事故としては特異な態様の事案だったが、我々はあくまでも被害者に過失はなかったという前提で自賠責への被害者請求をアドバイスしたところ、自賠責保険金は減額なしで全額支払われた。
④ 治療費についても、加害者側は一円も支払わず、全て被害者が負担していた。

認められた主な損害費目

将来介護料 約1億1,400万円
逸失利益 約5,500万円
将来雑費 約1,000万円
住宅改造費 約1,000万円
傷害慰謝料 約200万円
後遺障害慰謝料 約2,800万円
その他 約2,200万円
損害額
約2億4,100万円
過失30%控除後損害額 約1億6,800万円
弁護士費用 約1,100万円
遅延損害金(4年4ヶ月相当) 約3,000万円
総計
約2億900万円
既払控除(自賠責) -4,000万円
最終金額 約1億6,900万円
近親者慰謝料総額 約300万円

人身傷害による補充

本人分損害総額 2億4,100万円
過失相殺分 -約7,300万円
過失控除後
(本人受け取り、自賠責込み)
約1億6,800万円
人身傷害から補填
(上記30%の過失相殺分)
約7,300万円
本人受取額計
約2億4,100万円

(損害賠償額の総額)

詳細

加害者の主張

①事故直後から「この事故の責任は被害者に100%ある」と無責を主張。支払いは「0」

②遷延性意識障害者の余命年数を平均余命まで認めず、生存可能期間を限定して損害を算定するか、定期金で賠償すべきだと反論。

③逸失利益は生活費控除20%を行うべきだと主張。

裁判所の判断

①まず、自賠責保険を請求し、3,000万円を取得して、被害者の急場をしのぐことが出来、それから訴訟に着手した。

②裁判では坂道であるにもかかわらず無理な姿勢でのブレーキ解除を指示した被告に全面的な責任があることを、捜査資料や被告尋問を通して緻密に立証。その結果、判決では被告に7割の過失があることを認め、さらに、損保会社が支払いを無視し続けたことも非難の対象になった。

③当事務所は、原告の状態、介護する家族の状況や証言、主治医の意見を通して、自宅で手厚く介護すれば余命を全うできることを主張した。その結果、裁判所は、被害者が事故後4年以上を経て安定した状態にあること、主治医も現在の在宅介護の管理状態を前提とすれば、余命を全うする可能性も十分にあると供述していること、死因の過半数を占める呼吸器疾患(肺炎)を防ぐことで生命予後を改善できる見通しがあることなどを認め、同年齢女性の平均賃金を基礎とした逸失利益が、平均余命まですべて認められた。

④症状固定後に施術された脊髄後索電気刺激療法(DCS装置埋込術)の費用(約500万円)についての議論もあったが、この処置は医師の医学的判断で行われ、四肢の痙縮に一定の効果があったことから、この経費も表のとおりの高額な損害額を認めさせることができた。

⑤人身傷害保険の請求には、当事務所が開拓した「被害者に最も有利な方法である裁判所基準の差額説」を利用。その結果、原告の父親が加入する自動車保険の人身傷害保険により、被害者に最も有利である裁判所認定損害額の原告過失30%(7,300万円)が補填され、総額で2億4,100万円を獲得することができた。

母親が67歳までの17年間 (職業日中15000円+家族夜間3000円)×240日 + 家族8000円×125日
母親が67歳以上48年間 (職業日中15000円+職業夜間4000円)×365日
約1億1400万円を認める。

当事務所のコメント

①本件訴訟は、被害者の両親が加害者や損保会社の理不尽な主張に屈せず、信念を粘り強く貫き、当事務所にたどり着かれたことから始まった。しかし、自賠責で3,000万円が支払われ無責の主張が覆された後もなお、加害者と損保会社は被害者の余命年数を短縮するよう迫ってきた。こうした人権無視ともいえる主張は、在宅で24時間手厚い介護を続ける被害者の両親を大変苦しめていた。我々はその思いを汲んで、懸命に立証活動に取り組み、結果的に被告側の反論は全て退けられ、高額判決につながった。

②加害者が被害者に対して重い障害を負わせているにも拘らずかかわらず、「余命が短い=長生きしない(早く死ぬ)」という主張をすることは言語道断である。この非人道的な反論を粉砕できたことは、大きな意義があるといえるだろう。