脊柱及び骨盤骨変形10級による就労への影響が問題となった事例
東京地方裁判所管轄内
■上下肢切断・機能障害他(判例031)
■後遺障害等級:併合10級 確定年:2011年 和解
■東京地方裁判所管轄内
被害者の状況
①45歳・男性(大企業勤務)
男性 大企業勤務(症状固定時45歳)
原付バイクに乗車し交差点手前で停止中,後方から貨物自動車に衝突される。
脊柱変形11級,骨盤骨変形12級により併合10級
認められた主な損害費目
傷害慰謝料 |
約150万円 |
---|---|
休業損害 |
約140万円 |
逸失利益 |
約3,380万円 |
後遺障害慰謝料 |
約550万円 |
その他 |
約100万円 |
損害額 |
約4,300万円 |
自賠責保険金控除 |
-461万円 |
任意保険金控除 |
-約200万円 |
*1)調整金 |
約800万円 |
最終金額 |
4,500万円 |
*1)調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当
*2)自賠責保険金461万円,を加えて,総額約5,000万円を獲得した。
詳細
加害者の主張
①腸骨採取は健康への影響が少なく,腸骨採取による骨盤骨変形に労働能力喪失は認められない。したがって,脊柱変形11級による20%が労働能力喪失率として妥当である。
※10級27% 11級20%
②原告の事故前年の収入(約1,300万円)は,定年後ないし再雇用後も維持できるものではないから,同収入に基づく逸失利益を67歳まで認めることはできない。
裁判所の判断
①骨盤骨変形による就労への影響も若干認め,労働能力喪失率を23%とした。
※10級27%11級20%
②基礎収入について,60歳までは事故前の収入(約1,300万円)をベースとし,それ以降67歳までについてはその1/2(約600万円)をもって基礎収入とした。
当事務所のコメント/ポイント
自賠責では,後遺障害の等級に応じて労働能力喪失率が定められている。
しかし,裁判では,その労働能力喪失率を参考にしつつ,後遺障害の内容や被害者の職業等様々な事情を考慮して,現実の就労への影響(労働能力喪失率)を判断することとなる。そのため,腸骨採取による骨盤骨変形,鎖骨変形,外貌醜状,生殖機能喪失等については,一般的には労働への影響がない(少ない)とされるため,自賠責で等級の認定を受けても,逸失利益が認められない(若しくは等級よりも低くなる。)との判断がなされることがある。
本件では、被害者が大企業社員につき顕著な収入減がなく、退職後も含めて基礎収入が争われた。そこで、骨盤骨変形を原因とする疼痛によって就労への影響があることを丁寧に立証し、骨盤骨変形が就労に影響を与えることが認められた。その結果,60歳までは事故前収入(約1,300万円),退職60歳以降67歳まではその1/2(約600万円)を基礎収入として高額な逸失利益となった。
結果,脊柱及び骨盤変形併合10級としては高額な約4,500万円で和解し,自賠責込みで約5,000万円を獲得した。
交通事故訴訟では,事故による現実の就労への影響を丁寧に立証することが非常に大切であり,当事務所はこの点においても豊富な経験を有している。
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