示談(12級)から5年後,人工関節手術により新たに8級が認定
東京地方裁判所管轄内
■上下肢切断・機能障害他(判例030)
■後遺障害等級:8級 確定年:2011年 和解
■東京地方裁判所管轄内
被害者の状況
①26歳・女性(事務職)
女性 事務職(受傷時26歳 症状固定時41歳)
原告車両が優先道を走行中、被告車両が右方狭道から出会い頭に衝突した事故
股関節用廃8級(旧自賠責基準,新基準では10級)
認められた主な損害費目
傷害慰謝料 |
約140万円 |
---|---|
逸失利益 |
約1,550万円 |
後遺障害慰謝料 |
約690万円 |
従前示談金(12級前提) |
-約450万円 |
損害額 |
約1,940万円 |
過失10%控除後 |
約1,750万円 |
自賠責保険金控除 |
-595万円 |
労災保険金控除 |
-約155万円 |
*1)調整金 |
約690万円 |
最終金額 |
1,700万円 |
*1)調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当
*2)12級示談金1,400万円,自賠責保険金819万円,労災保険金約150万円を加えて,総額約4,000万円を獲得した。
詳細
事案の概要
平成5年の事故後,平成15年に症状固定し12級認定(股関節可動域制限)を受け,平成16年に1,400万円で示談成立した。その後,平成21年に症状が悪化したため,人工関節の手術を受け,新たに8級が認定された。
また,8級認定後,自賠責の基準が変更され,新基準では被害者の後遺障害は10級相当であった。
加害者の主張
①直進車同士の事故であり,被害者にも40%の過失が認められるべき
②被害者の後遺障害は,自賠責新基準では10級に相当するものである。また,被害者は事務職であり,業務への影響が限定的であるから,労働能力喪失率は10級相当の27%が妥当である。
③基礎収入は,女子学歴計年齢平均賃金ではなく,事務職であった被害者の実収入をベースにすべきである。
裁判所の判断
①平成16年の示談と同様,原告の過失を10%とする。
②労働能力喪失率を31%(8級35%と10級27%の中間)とする。
③基礎収入は,女子学歴計年齢平均賃金とする。
当事務所のコメント/ポイント
本件は,①示談成立後に症状が悪化し,等級が変更された点,②等級認定後に自賠責基準が変更された点で特殊な事案であった。
自賠責の基準は,現在の医療水準に合わせて改定されることがある。本件においても,人工関節の医療水準の向上に伴って,旧基準では8級とされていた人工関節が新基準では10級とされた。したがって,一般的には,労働能力喪失率は新基準に従うことが多いが,本件では8級35%と10級27%の中間的な解決となった。
また,女性の事務職の方でも,家庭で家事を行っている場合には,女子学齢計年齢平均賃金(平成27年:3,727,100円)を基礎収入として採用されることが多い。
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