高次脳3級20代女性、第一審判決から控訴審和解で調整金加算され3,000万円以上増額された事案
東京高裁
■高次脳機能障害(判例98)
■後遺障害等級:3級 確定年:2010年和解
■東京高裁
被害者の状況
①24歳・女性(アルバイト)
受傷時24歳・症状固定時30歳・女性(アルバイト)
道路横断中の被害者に加害車両が衝突したもの
高次脳機能障害3級
認められた主な損害費目
逸失利益 |
約5,700万円 |
休業損害 |
約1,780万円 |
将来介護費(日額6,000円) |
約4,050万円 |
傷害慰謝料 |
約450万円 |
後遺障害慰謝料 |
約1,990万円 |
近親者慰謝料 |
約450万円 |
その他 |
約2,020万円 |
損害総額 |
約1億6,440万円 |
過失相殺(40%) |
-約6,570万円 |
損害填補(任意) |
-約1,400万円 |
損害填補(自賠責)(※2) |
-約2,200万円 |
弁護士費用 |
約600万円 |
調整金(※1) |
約4,330万円 |
最終金額 |
約1億1,200万円 |
※1遅延損害金相当額
※2訴外獲得の自賠責保険金約2,200万円、を併せた総獲得金額は約1億3,400万円となる。
詳細
加害者の主張
①第一審の被害者側過失4割は不当であり本件事故は被害者の危険行動によって発生したものであるから95%の過失相殺が相当であると主張
②自賠責の等級認定において2級か3級かの区別は介護の要否によりなされている以上、介護が必要だとしても日額2,000円であると主張
裁判所の判断
①加害者側は事故後に被害者が残した「自殺を図ろうとした」という趣旨のメモを指摘して、事故の原因は被害者にあるという主張を行っていた。これに対しては、高次脳機能障害の影響があり、事故当時の心理状況を反映したものと評価すべきではないこと、また刑事記録に基づいて加害者の供述が信用できないこと等を立証し、第一審・控訴審和解案のいずれにおいても、被害者の過失は40%にとどめた。
②介護の必要性については、被害者の事故後の高次脳機能障害の影響を具体的に立証し、現実に母親が常時の看視・声掛けをしなければならない状況であることを主張した。また自賠責の認定にも深い知見を有する主治医にも証人尋問を実施し、専門的な観点から介護が必要であるとの供述を得ることができた。その結果、第一審・控訴審和解案ともに日額6,000円の近親者介護料を認めた。
当事務所のコメント
①自殺を企図したとの認定となった場合、相当な過失相殺が認められてしまうことになります。本件では、あくまでも事故後の高次脳機能障害の影響を受けている被害者が話す内容であることを丁寧に主張・立証し、加害者側からの自殺企図が立証できていないとの認定を勝ち取ることができました。
②確かに、高次脳機能障害について2級と3級は介護の要否が判断基準となっています。しかしながら、それはあくまでも日常生活動作そのものに対する身体的介護の要否であり、3級となったからといって看視・声掛けによる介護が不必要であると認定されているわけではありません。当事務所では、3級以下の事案であっても、具体的な事情をもとに主張立証を尽くすことで適切な介護料が認められるものと考えております。
③本件では、第一審の判決で損害賠償額は約7,300万円が認定されましたが、相手方はこれを不服として控訴し、上記のとおり第一審を不服として争う構えを見せました。しかし、最終的には、第一審で認められた当方の主張は維持され、調整金を含めて約1億1,200万円で和解となりました。
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