高次脳機能障害2級20代男性について介護料として約8000万円を認め総額2億3000万円以上の賠償を認めた和解事例
福島地方裁判所管内
■高次脳機能障害(判例208)
■後遺障害等級:2級1号 確定年:2020年 和解
■福島地方裁判所管内
被害者の状況
①22歳 ・男性(学生(アルバイト))
固定時22歳 男性・学生(アルバイト)
信号機の交差点における加害自動車と被害自転車の出合頭事故。
加害自動車が赤信号を看過して交差点に進入したところ、青信号で交差点に進入していた被害自転車に衝突したもの。
高次脳機能障害 自賠責別表第1・2級1号
認められた主な損害費目
約420万円 |
|
付添看護料(交通費を含む) |
約750万円 |
休業損害 |
約380万円 |
後遺障害逸失利益 |
約5400万円 |
将来介護料 |
約8150万円 |
住宅改造費用 |
約560万円 |
将来介護雑費・福祉車両買替費用 |
約590万円 |
後見人費用 |
約550万円 |
傷害慰謝料 |
約400万円 |
後遺障害慰謝料 |
約2370万円 |
その他 |
約330万円 |
損害総額 |
約1億9500万円 |
損害填補(任意保険) |
-約1000万円 |
損害填補(自賠責保険金)(※2) |
-約3000万円 |
調整金(※1) |
約7500万円 |
近親者固有慰謝料 |
約500万円 |
最終金額 |
約2億3,500万円 |
※1事故日からの遅延損害金や、弁護士費用、慰謝料増額事由の考慮等を含める
※2本件では当事務所にて自賠責申請を行って、約3000万円の自賠責保険金を獲得している。自賠責保険金と和解金を併せて、2億6000万円を超える高額賠償となった。
詳細
被告主張
①身体的介護は不要であり、近親者の介護料は日額3000~6000円程度である等として介護料を争った。
②被害自転車も赤信号で交差点に進入した、衝突地点から工学鑑定を行った自転車速度から、停止線を超えた時点ではまだ信号色は赤だったなどと主張して、過失相殺を求めた。
裁判所の判断
①身体的介護が必要な点や、性格変化等を含めた介護負担の大きさについて、詳細な主張立証を行った結果、裁判所和解案では、家族介護料としては日額8000円及び職業介護費用も認容し、被告側の主張を排斥した。
②工学鑑定書を被告側は提出し、被害自転車が、信号の変わり目で、まだ赤信号であるのに進入してきたという主張に対しては、そもそも工学鑑定の手法や、前提としている数値設定などが交通事故工学的知見に照らして不正確であることを、指摘して反論した。また、目撃者証言から合理的に考えられる信号表示としては、被害者が交差点に進入した時点では、既に青に変わっていたものと言えることを丁寧に論じた。その結果、裁判所和解案では、被害者の完全な無過失が認定された。
当事務所のコメント
①介護料については、純粋にそのまま利用額や主張している介護が認められるという簡易な損害費目ではなく、金額も高額になることから、被告側からも強く争われる点です。特に障害の実態像については、高次脳機能障害に関する専門的な知見に精通していなければ、的確な整理ができず、裁判所に十分に障害実態が伝わらないことになってしまいます。
当事務所では、高次脳機能障害に関しても、専門分野として長年賠償面だけではなく介護体制の構築や、医師への診断依頼の段階から深くかかわって被害者とそのご家族を支援してきた経験と、専門的知見があります。本件でも、詳細な障害実態と、介護負担の現実的な内容を詳細に、かつ、的確に整理をして主張を行ったことで、高額な賠償を獲得することができました。
②信号交差点の事案で、信号表示が問題となることは多々ありますが、高次脳機能障害など頭部外傷を負われた被害者の場合、事故の記憶が完全に失われてしまい、自身の運転に問題がなかったことを自分の記憶に基づいて説明することが出来ないという不利な状態に置かれています。
本件でも、被害者自身が対面信号の色について説明できないところ、被告側から、進入時はまだ赤信号だったなどという事実に反した主張が展開されました。
この点、明確に記憶がない分、通常の交通事故事件よりもハードルは高くなります。
本件では、交通事故専門事務所として、相手方の工学鑑定書の杜撰さを的確に指摘し、反対意見を出した上で、目撃証言(直接進入時の信号色までは見ておらず、周辺事情について証言がありました)を分析して、信号サイクルに照らし合わせるといった緻密な反論を行った結果、被害者が赤信号で進入したとは認め難く、青信号進入を前提とすべきであるとして、裁判上の和解において無過失を勝ち取ることができました。
③また、本件では認容された損害賠償額の約50%にも相当する約7500万円という極めて高額な調整金も獲得しています。
調整金とは、和解において遅延損害金(賠償完了までに生じる利息のようなものです)や弁護士費用相当損害金を加味して、裁判所が加算する賠償金です。
本件は事故から賠償解決までに相当年数を要しましたので、その期間の御家族やご本人の苦労にも見合うだけの調整金が加算されました。
これにより、自賠責保険金を含めると、2億6000万円を超える高額賠償を獲得できました。