加害者側の7級主張を排斥し,自賠責同様被害者に高次脳機能障害5級(併合4級)を認定させ,適切な将来介護費用約2070万円(日額3000円)を始めとする総獲得額約1億1640万円を勝ち取った例。
横浜地方裁判所管轄内
■高次脳機能障害(判例199)
■後遺障害等級:5級2号 併合4級 確定年:2019年 和解
■横浜地方裁判所管轄内
被害者の状況
①17歳・男性(高校生)
男性 受傷時17歳 高校生
被告が自動車で道路走行中,道路を横断歩行していた原告に衝突した。
併合4級(高次脳機能障害5級2号及び嗅覚障害12級相当)
認められた主な損害費目
付添看護料 |
約390万円 |
---|---|
逸失利益 |
約9,130万円 |
将来介護料 |
約2,070万円 |
傷害慰謝料 |
約330万円 |
後遺障害慰謝料 |
約1,670万円 |
その他 |
約220万円 |
損害額 |
約1億3,810万円 |
過失30%控除 |
-約4,140万円 |
自賠責保険金控除 |
-1,798万円 |
障害年金控除 |
-約80万円 |
既払い保険金控除 |
-約450万円 |
*1調整金 |
約2,500万円 |
*2最終金額 |
約9,840万円 |
*1調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当。
*2自賠責保険金1798万円及び障害年金約80万円を加えた総受取額は約1億1720万円である。
詳細
加害者の主張
①事故現場道路にはガードレールが存在しており,歩行者横断禁止であったと理解できるから,原告には35%の過失相殺をすべきである。
②原告は症状固定後最終的に高次脳機能障害がある程度改善しており,専門学校も卒業していて,将来的に一定の軽易な労務は可能と思われるから,原告の高次脳機能障害の程度(等級)は7級程度と言うべきであり,将来の付添介護は不要である。
③原告の逸失利益を算定する上では,労働能力喪失率は後遺障害7級に対応する56%とすべきである。また嗅覚障害は一般的な職業に関係ないからこれによる労働能力喪失は生じない。
原告の反論
①事故現場付近のガードレールは途切れ途切れにしか存在せず,原告の横断箇所はガードレールが途切れていたのだから,歩行者横断禁止の規制はなかった。よって原告の過失は高くても30%にしかならない。
②原告は高次脳機能障害のため特に持続力・持久力低下や理解力低下,協調性低下が著しく,全般として症状が重いことは,家族のみならず,卒業した専門学校の関係者や,利用中の支援施設責任者らが揃って証言している。したがって,原告の高次脳機能障害の程度は低くとも5級相当であるし,将来にわたり介護が必要である。
③原告の高次脳機能障害の重篤さに鑑みれば,労働能力喪失率は少なくとも併合4級相当(92%)以上でなければならない。
・最終的にこれらの点について原告の主張に沿った内容での和解が成立。将来介護料は日額3000円で,逸失利益における労働能力喪失率は4級相当の92%(嗅覚障害も考慮)でそれぞれ算定された。
【当事務所のコメント/ポイント】
交通事故による高次脳機能障害について,自賠責保険で認定された等級を加害者側が争ってくる事態はしばしば見られるところである。この事例では,自賠責保険による高次脳機能障害5級(併合4級)の認定に対し,相手側からは症状回復や専門学校卒業の事実等を根拠として,高次脳機能障害は7級程度であり,介護はもちろん不要であるとの反論がなされた。そこで我々において,高次脳機能障害に起因する症状の特徴について丁寧に解説し,被告からの反論に対して全て的確な指摘・説明を行った結果,裁判所も自賠責保険の認定が適正であることを認め,相手側の主張を全面的に排斥した上で,日額3000円の将来介護費用(計約2070万円)及び併合4級相当の92%の労働能力喪失率を前提とした逸失利益(計約9130万円)を認定した。
また過失相殺を巡る議論についても,正確な法的知識に基づく反論の結果,加害者側による歩行者横断禁止規制違反の主張を排斥することができた。
以上の結果,過失相殺30%ながらも,総取得額は自賠責保険金及び障害年金を併せて約1億1720万円と,高次脳5級として高額な成果になった。