行政等の支援を受けながら一人暮らしをする高次脳機能障害5級被害者につき,5級としては高額な日額6000円の将来介護費用を獲得した事例。
前橋地方裁判所管轄内
■高次脳機能障害(判例198)
■後遺障害等級:5級2号 確定年:2019年 和解
■前橋地方裁判所管轄内
被害者の状況
①59歳・男性(会社員)
男性 受傷時59歳 会社員
原告が道路横断中に,走行してきた前方不注視の被告自動車に衝突された。
高次脳機能障害5級2号
認められた主な損害費目
治療関係費 |
約380万円 |
---|---|
休業損害 |
約110万円 |
逸失利益 |
約1,570万円 |
将来介護費用 |
約2,950万円 |
傷害慰謝料 |
約240万円 |
後遺障害慰謝料 |
約1,500万円 |
その他 |
約30万円 |
損害額 |
約6,780万円 |
過失20%控除後 |
約5,430万円 |
既払い保険金(任意)等控除 |
-約760万円 |
自賠責保険金相当額控除 |
-1,574万円 |
*1調整金 |
約900万円 |
*2最終金額 |
約4,000万円 |
*1調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当。
*2自賠責保険金1574万円を加えた総受取額は約5570万円である。
詳細
加害者の主張
①原告の高次脳機能障害5級は,そもそも介護を必要とすることが前提とされている等級ではないし,現に原告は事故後も一人暮らしをしているのであるから,将来介護費用は最大でも日額2000円程度である。
②原告が事故前に飲酒していた事実に鑑み,35%の過失相殺をすべきである。
裁判所の判断
①原告は高次脳機能障害のため,一人暮らしとはいえ行政等の支援を受けながら,就労支援施設に通所しつつ生活しているのであって,要するに日常生活を送る上で,身寄りがないがために職業介護を必要としている状態である。したがって,将来介護費用は日額6000円を基礎に,約2950万円を認める。
②原告は飲酒運転をしていた訳ではなく,また飲酒による不自然な行動の形跡も見られないことから,飲酒の事実は過失相殺に影響しない。他方で被告には著しい前方不注視があったことも踏まえ,過失相殺は20%が妥当である。
【当事務所のコメント/ポイント】
交通事故による高次脳機能障害5級を負った被害者が,身寄りがないため事故後も一人暮らしをしていたところ,その将来介護費用が最大の争点となった事例である。保険会社側は,被害者が事故後も一人暮らしで生活できていることから,将来介護費用は低額で足りるとの主張を行った。これに対し我々においては,高次脳機能障害を負った身寄りのない被害者が,現実には行政の支援に支えられながら,就労支援施設という居場所を与えられ,生活上の世話を受けて何とか日常生活を過ごしている実態を的確に指摘・説明した結果,裁判所は職業介護を前提として,将来介護費用として高次脳5級としては高額な基準(日額6000円)の計3000万円近くを勝ち取った。
また過失相殺についても正確な反論を行った結果,裁判所は保険会社側主張の過失相殺35%を排斥し,20%と認定した。
結果,症状固定時60歳の高次脳5級且つ過失相殺が20%という事案ながら,自賠責保険金を加えた総額は約5570万円と高額な獲得額を得た。