過失相殺55%の高次脳機能障害2級被害者について,適切に人身傷害保険金を請求した結果,損害賠償額と人身傷害保険金額を合わせた総獲得額が約1億9860万円に達した事例。
横浜地方裁判所管轄内
■高次脳機能障害(判例197)
■後遺障害等級:2級1号 確定年:2019年 和解
■横浜地方裁判所管轄内
被害者の状況
①15歳・男性(中学生)
男性 受傷時15歳 中学生
原告が自転車に乗り赤信号で道路を横断中,速度超過の被告自動車に衝突された事故。
高次脳機能障害2級1号及び嗅覚脱失12級
認められた主な損害費目
治療費 |
約130万円 |
---|---|
付添看護料 |
約340万円 |
逸失利益 |
約9,050万円 |
将来介護料 |
約5,600万円 |
住宅改造費 |
約500万円 |
介護機器等費用 |
約140万円 |
傷害慰謝料 |
約400万円 |
後遺障害慰謝料 |
約2,370万円 |
近親者慰謝料 |
約400万円 |
その他 |
約110万円 |
損害額 |
約1億9,040万円 |
*1過失55%控除 |
-約1億0,470万円 |
*2人身傷害保険金控除 |
-0円 |
*3調整金 |
約1,290万円 |
*4最終金額 |
約9,860万円 |
*1人身傷害保険金約1億円が過失相殺分に塡補されるため,実質的な過失相殺額は約-470万円相当となる。
*2人身傷害保険金約1億円は全額が過失相殺分に填補されるため,控除対象とならない。
*3調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当。
*4人身傷害保険金約1億円を加えた総受取額は約1億9860万円である。
詳細
加害者の主張
①原告は自賠責保険により高次脳機能障害2級の認定を受けているが,その後症状が明らかに改善しているから,せいぜい高次脳機能障害3級~5級相当である。
②原告自転車は赤信号にも拘わらず道路を横断したのだから,90%の過失相殺をすべきである。
原告の反論
①原告の高次脳機能障害は少なくとも自賠責保険の認定通り2級を下らない。なお,原告は事故後大学に合格しているが,これは大学側が原告の高次脳機能障害を前提に特別な配慮をした結果であって,一般の学生とは学力面その他においてきわめて重大な乖離がある。現実の原告は,日常生活動作にも介助が欠かせない程であるから,被告が主張するような高次脳機能障害3級以下という評価はあり得ない。
②原告自転車に赤信号横断があった事実を前提としても,被告側にも制限速度を時速30km以上超えた速度で運転していた重大な過失が存するのであり,さらに原告が当時自転車横断帯を横断していた事実も併せて加味すれば,過失相殺率が55%を超えることはない。
・最終的にこれらの点について原告の主張に沿った内容での和解が成立。
【当事務所のコメント/ポイント】
①人身傷害保険金の請求について
本件は,赤信号で道路を横断した原告自転車にも一定の過失(最終的には55%の過失相殺)が見込まれたである。そこで我々は,加害者(保険会社側)に対する訴訟に先立ち,被害者一家が加入していた人身傷害保険に対して人身傷害保険金を請求し,まずは1億円の人身傷害保険金を取得した。その結果,その後に行った訴訟において,1億円の人身傷害保険金額の全額が,被害者の過失相殺分に充当されることとなった。このため,実質的には過失相殺による控除額をわずか約-470万円相当に抑えることができ,結果として約1億9860万円の総受取額を確保し,ご家族にとって非常にご安心いただける結果となった。
②裁判について
交通事故で高次脳機能障害2級を負った被害者について,保険会社側は症状固定後の大学合格の事実等を根拠に「3級~5級レベル」と主張し争いとなった事案である。我々において,被害者の大学合格は当該大学の障害者に対する特別な配慮に因るものだという事実,さらに被害者があらゆる生活動作について必要としている介護の内容とその負担の大きさを丁寧に主張した結果,相手側の主張は無事に裁判所によって排斥された。
また,過失相殺に関して,保険会社側は原告自転車による赤信号横断を根拠に「90%の過失相殺をすべき」との主張を行っていたが,我々において加害者の大幅な速度超過等の事実を適切に指摘して反論した結果,そもそも被害者の過失は55%に留まるとの判断を勝ち取ることができた。
これらの適切な手続進行の結果,被害者の総取得額は人身傷害保険金を併せて(当方の過失が55%あるにも拘わらず)約1億9860万円と,大きな成果を上げることができた。