高次脳機能障害3級併合1級10代男性について介護料約8000万円を含み約1億4500万円の賠償を認めた和解
熊本地方裁判所管内
■高次脳機能障害(判例191)
■後遺障害等級:3級3号 併合1級 確定年:2018年 和解
■熊本地方裁判所管内
被害者の状況
①17歳・男性(高校生)
事故時17歳 固定時19歳 男性・高校生(当時)
センターラインオーバーをした加害車両が被害者の同乗していた車両に衝突したもの
高次脳機能障害 3級3号
眼球障害8級相当(両眼視野変状9級、1眼視力低下13級)
併合1級
認められた主な損害費目
約600万円 |
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症状固定前付添費 |
約490万円 |
後遺障害逸失利益 |
約9900万円 |
将来介護料・関連費 |
約8660万円 |
傷害慰謝料 |
約440万円 |
後遺障害慰謝料 |
約3000万円 |
損害総額 |
約2億3090万円 |
過失相殺(10%) |
-約2300万円 |
人身傷害保険金(※2) |
-約3700万円 |
損害填補(任意保険) |
-約650万円 |
損害填補(自賠責)(※3) |
-約3000万円 |
調整金(※1) |
約860万円 |
近親者慰謝料 |
約200万円 |
最終金額 |
約1億4500万円 |
※1事故日からの遅延損害金や、弁護士費用、慰謝料増額事由の考慮等を含める
※2本件では、訴訟に先立ち人身傷害保険金6000万円を先行して獲得している。
本件における人身傷害保険金は、被害者側の過失相殺による自己過失額に充当し、超過した金額のみ損害賠償額より控除する。
本件では、人身傷害保険金6000万円は、自己過失額2300万円への充当を優先するので、超過分3700万円のみが賠償額より控除された。
※3本件では、当事務所が上記人身傷害保険金、和解金の他、自賠責保険金約3000万円を獲得した。その結果、総額2億3000万円以上の高額賠償となった。
詳細
被告主張
①被害者が同乗していた運転者側の法令違反(無免許運転)に関して、被害者にも同乗者としての過失がある、また、シートベルト着用を怠っていたとして、40%の過失相殺を主張
②被害者は、家庭内での生活はほぼ自立しており見守りや声掛けが必要としてもその負担は大きいものではない。また、家族が67歳以降も家族で介護が可能なので、職業介護費用を加算する理由はないと主張。家族介護料についても平日の朝夜の介護として日額2000円、土日は日額4000円が相当と反論した。
裁判所の判断
①過失相殺に関しては、運転者側の無免許運転を被害者自身は知らず、仮に何らかの事情を承知していても、巻き込まれたのみであり被害者には責任がないこと、加害車両はマイクロバスでそもそもの衝突の衝撃が大きく、シートベルトの着用如何によって結果が大きく変動するものではないことについて詳細に反論を行った。その結果、裁判所和解案としては、被告側の40%もの過失相殺は認めず、被害者の過失は10%に留まると判断された。
②詳細な医師の所見、半側空間無視や注意、記憶障害などの重篤性に加えて視野欠損・視力低下の影響の重大さ、これにより常に外出時にも危険がないように頻繁に声かけを行っていく負担が決して軽度ではないことを詳細に主張立証した。その結果、裁判所和解案では、母67歳までは、デイサービス利用をする平日週5日は日額1万3000円、土日は日額6000円、67歳以降は、日額1万4000円を認定した。
当事務所のコメント
①同乗者側の違法・過失行為については、これをわかっていながら同乗した場合には、好意同乗という理由から、同乗者である被害者にも一定の過失が発生する場合があります。しかしながら、本当に被害者が承知していたのか、承知していたとしても立場上、指摘が可能だったかとか、積極的に加担したのかというより具体的な経過を充分に評価する必要があります。
本件でもそうした事情を含めて詳細に反論し、被害者の責任は極めて小さいことを立証することができました。
10%の過失が和解案では認定されましたが、この点は、先行取得していた人身傷害保険金により全額充当されており、大きな損失になることは回避されています。こうした各種保険の利用と賠償の関係を含めて、専門的な助言も行っております。
②高次脳機能障害の被害者の場合、生活に必要最低限の動作(ADL)が自立していても、結局、日々の生活場面での判断や、自発的な活動、適切な意思疎通、記憶や情緒面などに問題を抱えていると、とてもではありませんが、自立して生活していくことは困難という場合も多くあります。
しかしながら、加害者側からは、家族らの行う声かけや見守り介護は、そこまでの負担はないなどとして低額な賠償提示が行われることが多くのケースで認められます。
当事務所では、これまでにも数多くの高次脳機能障害の方、障害のために介護が欠かせない方の賠償をお手伝いしており、高次脳機能障害という複雑な障害についても、介護の大変さや、負担の大きさについて、どのような立証方法が、実態を的確に裁判所に評価してもらえるのかという観点についても、深い知見と経験があります。
本件は、充実した立証活動により、被害者の障害の重篤さ、ご家族の介護の大変さが裁判所に適切に評価された好例と言えます。