日常生活における自立性有りを理由とする加害者側の3級主張を排斥し,被害者の高次脳機能障害を自賠責同様2級認定させ,高額な総獲得額約2億4,000万円超を獲得した例。
名古屋地方裁判所管轄内
■高次脳機能障害(判例174)
■後遺障害等級:2級1号、併合2級 確定年:2017年 和解
■名古屋地方裁判所管轄内
被害者の状況
①16歳・男性(アルバイト)
男性 受傷時16歳 アルバイト
原告がバイクで走行中,対向車線から路外施設駐車場に向けて右折してきた被告自動車に衝突された。
別表第一併合2級(脳外傷による高次脳機能障害2級1号,一眼失明7級1号,一眼半盲13級3号)
認められた主な損害費目
治療費 |
約550万円 |
---|---|
付添看護料 |
約260万円 |
休業損害 |
約350万円 |
逸失利益 |
約9,580万円 |
将来介護費用 |
約8,730万円 |
傷害慰謝料 |
約420万円 |
後遺障害慰謝料 |
約2,800万円 |
その他 |
約340万円 |
損害額 |
約2億3,030万円 |
過失10%控除後 |
約2億0,720万円 |
既払い保険金控除(任意) |
-約850万円 |
自賠責保険金控除 |
-3,000万円 |
近親者慰謝料 |
約450万円 |
*1調整金 |
約3,680万円 |
*2最終金額 |
約2億1,000万円 |
*1調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当
*2自賠責保険金3,000万円を加えた総獲得額は約2億4,000万円である。
詳細
加害者の主張
① 目撃者証言に基づき算出したところ,原告は事故当時時速40kmも速度超過してバイク運転を運転していたと考えられるから,30%以上の過失相殺をすべきである。
② 原告は高次脳機能障害につき自賠責保険で2級と認定されたのだが,日常生活動作そのものは自立するまでに回復しているのだから,高次脳機能障害はせいぜい3級であるし,将来介護費用も認められない(仮に認められても,せいぜい日額3,000円程度である。)。
裁判所の判断
① 被告が速度計算の根拠としている目撃者証言については,そもそも被告自動車の後方を走行していた目撃者が位置確認を正確にできたとは言い難く,さらには事故後2ヶ月も経過してからなされた証言であることから,信用することはできない。したがって過失相殺率は10%である(概ね原告の主張通り)。
② 原告には,高次脳機能障害に伴う注意障害及び運動機能低下(転倒リスク)等の各症状が併存しているのであって,これら症状が併存することにより,周囲による見守り声掛けの必要性及び負担が増大している。したがって,原告に対しては周囲による随時の見守り声掛けといった介護が必要であるから,原告の高次脳機能障害は自賠責保険の認定通り2級である。
これを前提に,上記の症状併存に加えて眼の障害も残存しており,原告に対する看視介助の必要性及びその介護負担は相当重い。したがって将来介護費用は,近親者介護については日額8,000円,職業介護については,母親が病気のため介護ができなくなった時まで日額1万円,それ以降父親が67歳になるまでは日額1万2,000円,父親67歳以降は日額1万5,000円として算定する。
当事務所のコメント/ポイント
交通事故で高次脳機能障害2級を負った被害者について,保険会社側は症状固定後の一定の日常生活動作自立を根拠に「3級」と主張し争いとなった事案である。我々において,被害者のあらゆる生活動作について必要な介護の内容とその負担の大きさについて丁寧に主張した結果,相手側の主張は無事に裁判所によって排斥された。将来介護費用についても,高次脳機能障害の症状に加えて眼の障害についても詳細に説明の上,介護負担の重さについて正確に立証した結果,近親者介護費用日額8,000円,職業介護費用は母親が病気になるまで日額1万円,それ以降父親67歳まで日額1万2,000円,父親67歳以降は日額1万5,000円という,(眼の障害もあるとはいえ)高次脳2級としては高額な基準の将来介護費用計約8,730万円を勝ち取った。
また,適正な過失相殺割合についても適切に反論し,「被害者には時速40kmの速度超過があった」との保険会社側主張を排斥して相殺率10%と認定させた。
事故から解決まで5年以上が経過し,調整金も約3,680万円と高額になったため,最終的な総獲得額は約2億4,000万円ときわめて高額なものとなった。