過失逆転事案 過失30% ⇒ 過失0%
横浜地方裁判所管轄内
■高次脳機能障害(判例164)
■後遺障害等級:5級 確定年:2017年 和解
■横浜地方裁判所管轄内
被害者の状況
①69・女性(主婦)
女性 主婦(事故時69歳、症状固定時71歳)
被害者が横断歩道を横断中に右折自動車に衝突された事案
高次脳機能障害5級
認められた主な損害費目
治療費 |
約760万円 |
---|---|
傷害慰謝料 |
250万円 |
休業損害 |
約440万円 |
逸失利益 |
約1,590万円 |
将来介護料 |
約1,065万円 |
後遺障害慰謝料 |
1,400万円 |
その他 |
約195万円 |
損害額 |
約5,700万円 |
任意保険金控除 |
-約760万円 |
自賠責保険金控除 |
-1,574万円 |
*1)調整金 |
約865万円 |
近親者慰謝料 |
約70万円 |
最終金額 |
約4,300万円 |
*1)調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当
*2)自賠責保険金約1,574万円を加えて,総額約5,870万円を獲得した。
詳細
加害者の主張
①被害者は、歩行者用信号が青点滅となったことに焦って左右の安全不十分なまま小走りで横断を開始し、軽率にも被告車両に巻き込まれたものである。衝突時の歩行者用信号は既に赤信号であった。このような事故態様に鑑み、原告にも30%の過失が認められる。
②高齢夫婦2人の家庭において、被害者である妻のみが一切の家事を負担していたとは到底考えられず、夫も負担していたのだから,休業損害及び逸失利益ともに家事負担の割合に応じ,女性70歳以上平均賃金の4割程度(年収約110万円)をもって基礎収入とすべきである。
③被害者の運動機能に問題はなく、食事などの身の回りの動作の大半が自立しているのであるから、介護が必要な状況にあるとは到底認められない。したがって、付添看護料、将来介護料いずれもこれを認めることはできない。
裁判所の判断
①被害者の歩行者用信号が赤色であったと民事裁判になって突如主張し出した被告の供述に信用性はなく、その他目撃者供述等に照らしても、被害者側歩行者用信号が青点滅あるいは赤であったとする証拠はない。したがって、青信号に従って横断をしていた原告に過失相殺されるべき過失は存しないというべきである(原告の主張どおり)。
②逸失利益等の基礎収入については、主婦として生活していたことから,原則どおり女性70歳以上平均賃金283万円として算定する。
③将来介護料については、親族による随時声掛けや看視を必要とするから、日額2,500円として認める。
当事務所のコメント/ポイント
本件は、過失相殺、逸失利益の基礎収入、将来介護料等ほぼ全ての損害費目について全面的に争われた事案であった。その中で、刑事記録を精査して被告供述の信用性がないことを立証し、あるいは、被害者の現在の介護状況をご家族から詳細に聞き取り、その負担を丁寧に主張するなどした。その結果、過失相殺を0%とすることに成功するとともに、高次脳5級の被害者について日額2,500円の将来介護料が認定された。また,逸失利益の基礎収入についても,被告の主張を排斥し,原則どおり,主婦として70歳女性の平均賃金が認められた。高次脳機能障害の方の案件を専門的に取り扱っている当事務所の丁寧で専門的な立証が大いに発揮された事案である。
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