自賠責7級認定の高次脳機能障害被害者に対し,事故後の中学及び高校通学を理由に等級を争った被告主張を排斥して自賠責同様7級認定させた上,7級として高額な総額約5,800万円を獲得した事例。
水戸地裁管内
■高次脳機能障害(判例158)
■後遺障害等級:7級4号、併合6級 確定年:2016年 和解
■水戸地裁管内
被害者の状況
①12歳・女性(中学生)
女性 受傷時12歳 中学生
原告が歩いて横断歩道上を横断中,速度超過且つ前方不注視で運転してきた被告自動車に衝突された。
併合6級(脳外傷による高次脳機能障害7級4号,外貌醜状9級16号)
認められた主な損害費目
入通院付添費 |
約30万円 |
---|---|
逸失利益 |
約3,740万円 |
傷害慰謝料 |
約160万円 |
後遺障害慰謝料 |
約1,180万円 |
その他 |
約80万円 |
損害額 |
約5,190万円 |
既払い保険金控除後(任意) |
-約110万円 |
自賠責保険金控除 |
-約1,296万円 |
*1調整金 |
約720万円 |
*2最終金額 |
約4,500万円 |
*1調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当
*2自賠責保険金1,296万円を加えた総獲得額は約5,800万円である。
詳細
加害者の主張
①原告が事故直後に入通院した病院の医療記録を見ると,高次脳機能障害と思しき目立った記載は確認できない。さらに原告は事故後も中学校~高校と通学しているのだから,7級に該当するほどの高次脳機能障害は認められない。
②原告は女性であるから,逸失利益算出の前提となる基礎収入は,統計上の女子平均賃金を前提とすべきである。
・原告の反論
①原告が事故直後最初に入通院していた病院では,期間も短い上に,救急医療及び保存的加療が中心であり,高次脳機能障害に着目した特別な治療は特になく,高次脳機能障害を判断する資料としては内容が不足しているから,被告の主張には問題がある。また,原告は事故後,中学校や高校において深刻な記憶障害などの高次脳機能障害による諸症状が顕在化しており,リハビリ病院でも指摘されているのだから,医療記録全体や学業成績などの証拠を総合的に見れば,むしろ原告に7級相当の高次脳機能障害が認められることは明らかである。
②統計上の女子平均賃金は,男女不平等であった過去の実績は反映されているため,男子平均賃金と比べて不当に低い金額となってしまっている。原告は事故当時小学生と年少であり,男女雇用機会均等が進んだ昨今,性別を理由に基礎収入を低く見積もることは許されない。基礎収入は統計上の男女両方の平均賃金を用いるべきである。
・最終的にこれら2点について原告の主張に沿った内容での和解が成立。
当事務所のコメント/ポイント
本件におけるポイントは,高次脳機能障害(「被害者の高次脳を否定する相手側の主張に対する対応)と逸失利益(「女子に対しては統計上の女性平均賃金を基礎として算定すべき」との相手側主張に対する対応)である。
このうち高次脳機能障害の点に関しては,我々が被害者ご家族と綿密に連絡を取り合いながら医療記録や学業成績などの重要な証拠を入手し,これら資料を丁寧に分析の上主張立証に努めた結果,相手側主張の不合理性を看破し,高次脳機能障害を認めさせた。
また逸失利益の点に関しては,最新の裁判実務上の取扱いを我々において正確に理解していたことから,適切な主張を展開することができ,その結果男女不平等の過去を引き摺った古い考え方を排除することができた。
以上の結果,高次脳機能障害7級ながら,総取得額としては自賠責保険金を併せて約5,800万円と高額になった。
- 引用 -
自賠責7級認定の高次脳機能障害被害者に対し,事故後の中学及び高校通学を理由に等級を争った被告主張を排斥して自賠責同様7級認定させた上,7級として高額な総額約5,800万円を獲得した事例。