高次脳5級年少女子について等級が争点となり控訴審まで争われるも第一審・控訴審ともに自賠責認定通り5級を認め8,000万円以上の賠償となった裁判例
名古屋高等裁判所管内
■高次脳機能障害(判例152)
■後遺障害等級:5級 確定年:2015年判決
■名古屋高等裁判所管内
被害者の状況
①9歳・女児(小学生)
受傷時9歳・固定時10歳 女性
被害者が横断歩道を歩行中、これを見落とした右方からの加害車両が被害者に衝突した
高次脳機能障害5級
認められた主な損害費目
逸失利益 |
約4,500万円 |
---|---|
傷害慰謝料 |
約120万円 |
後遺障害慰謝料 |
約1,400万円 |
その他 |
約180万円 |
損害総額 |
約6,200万円 |
損害填補(任意保険) |
-約25万円 |
弁護士費用 |
約600万円 |
遅延損害金(※1) |
約1,670万円 |
総合計額 |
約8,445万円 |
※1事故より約5年が経過しており、年5%が認められた。
※2第1審・控訴審判決ともにほぼ同額が認められた。
詳細
加害者の主張
①後遺障害診断は時期尚早でここから回復をしていくことを考えれば一般就労が可能な9級あるいは7級と評価すべきであるとして自賠責の判断を争った。
②横断歩道上の事故だが、被害者に左右の不注意と飛び出しがあったとして15%の過失相殺を主張した。
裁判所の判断
①当方からは、医師が高次脳機能障害と判断した具体的な理由や、自賠責の等級認定を示すだけではなく、中学生となった現在においても、学習面・生活面のフォローを受けてきたにも関わらず小学4年生から学力や精神年齢等の発達が僅かにしかみられない状況にあり、「回復していない」という現状を丁寧に立証した。その結果、第一審では和解案の時点から裁判所は全面的に当方の主張を採用し、第一審判決・控訴審判決ともに被害者の高次脳機能障害を5級と認定した。
②事故態様についても、横断歩道上の歩行者は絶対的な保護を受けるのであって、その存在を看過していたような重度の前方不注意がある加害者について、過失相殺は認めるべきではないと主張し、裁判所は全面的にこれを採用し、第一審・控訴審ともに過失相殺を認めない(被害者側の過失は0%である)と判示した。
当事務所のコメント
①若年者の場合、確かに年配の方と比べても高次脳機能障害について回復する傾向にあることから症状固定の判断は、2年近くの経過をみて判断することが相当であると考えられています。本件でも、加害者は被害者の方がソフトボール部に所属していることなどを指摘して、相当程度回復しているのであり、高次脳機能障害の程度は5級を下回ると主張しました。これに対して、当事務所では多くの若年者の高次脳機能障害の方の賠償を支えてきた経験と実績から的確に関係者から聴取を行い、現在の担任や部活の顧問の教員の方々からも丁寧に現状を聴き取り、証人としても出廷をお願いしました。その結果、裁判所においても原告が主張した「回復していない」との点を全面的に認め、被告の反論を排斥することができました。
②過失についても、刑事記録に基づき適切な反論を行うことで、被告の主張が根拠がないことを明らかにし、判決においても被害者の無過失が認定されました。
- 引用 -
高次脳5級年少女子について等級が争点となり控訴審まで争われるも第一審・控訴審ともに自賠責認定通り5級を認め8,000万円以上の賠償となった裁判例