高次脳1級70代女性について兼業主婦として1,700万円以上の逸失利益が認められた事例
京都地裁管内
■高次脳機能障害(判例149)
■後遺障害等級:1級 確定年:2015年和解
■京都地裁管内
被害者の状況
①73歳・女性(兼業主婦)
受傷時73歳・固定時74歳 女性(兼業主婦)
②駐車場から道路内に進入してきた加害車両が直進してきた被害自転車に衝突したもの
③高次脳機能障害1級
認められた主な損害費目
将来介護費 |
約3,100万円 |
---|---|
住宅改造費 |
約800万円 |
介護雑費・介護用品費用 |
約600万円 |
休業損害 |
約300万円 |
逸失利益 |
約1,700万円 |
傷害慰謝料 |
約300万円 |
後遺障害慰謝料(近親者慰謝料を含む) |
約2,800万円 |
その他 |
約900万円 |
損害総額 |
約1億500万円 |
損害填補(任意保険) |
-約550万円 |
損害填補(自賠責)(※2) |
-約3,500万円 |
調整金(※1) |
約1,350万円 |
総合計額 |
約7,800万円 |
※1遅延損害金及び弁護士費用相当額を含む
※2訴外獲得の自賠責保険金約3,500万円と合わせて、総額約1億1,300万円での解決となった。
詳細
加害者の主張
①被害者が症状固定後も入院を継続していたことや家族らが自宅介護に対して否定的な見解を示していたことなどを指摘して在宅介護の蓋然性を争い、施設介護を前提として将来介護料は日額3,000円程度が妥当と主張し、また住宅改造費についても詳細項目についてその必要性・相当性を争った。
②逸失利益についても被害者主張の年齢別平均賃金を基礎収入としている点を争った。
③本件は駐車場から路外に出たという事案ではなく、実質的には交差点内の出合い頭衝突の事案と同視すべきであるなどと主張して過失相殺を主張した。
裁判所の判断
①在宅介護の点に関して、当方からは、既に住宅改造も終えて10ヵ月もの間在宅介護を現実に継続している実績を指摘し、医師においても在宅介護移行によって健康状態が改善しているとして在宅介護が望ましいとの意見書を出していることなどを併せて主張立証し、住宅改造の各項目についても詳細にその必要性・相当性を立証した。裁判所和解案においても、介護費用日額3,000円程度との被告主張を斥け、在宅介護を前提に日額1万円の将来介護費用と、800万円以上の住宅改造費を認定した。
②兼業主婦として清掃業などをシルバー人材センターより派遣されて行っていたことなどを主張立証したことで、裁判所和解案でも年齢別平均賃金を基礎収入として兼業主婦として逸失利益1,700万円以上を認めた。
③現場の状況などを刑事記録などを精査して丁寧に立証した上、加害者側にも相当な不注意があることなどを主張した結果、裁判所は被害者の過失は0%(無過失)であると認めた。
④事故から5年近く経過していたことをも踏まえて裁判所和解案では、調整金として1,350万円を付加し、和解金は総額7,800万円となった。
当事務所のコメント
①在宅介護については、費用も相当大きくなることから訴訟においても加害者側から強く争われることが多い損害項目となります。将来費用の請求であることから、在宅介護費用や住宅改造費の請求には在宅介護継続の蓋然性(可能性よりもより現実となる見込みが強い状態)がなければ賠償としては認められません。本件では、症状固定後しばらくの間在宅に移行せず、入院加療を継続していた事情や、その当時の状況を前提に近親者の方々が在宅介護を難しいと発言していたことなどを執拗に指摘されていました。しかしながら、現実に既に在宅介護へと移行し、家族らが10ヵ月に渡ってしっかりと介護を継続している実績を立証していくことで、加害者主張は斥けられる結果となりました。
住宅改造を含めて、当事務所では多くの介護を必要とする被害者の方の賠償を支えてきた経験があります。本件でも、しっかりと住宅改造の内容詳細や、住宅介護実績を示す資料を収集し、精査したことで住宅介護の蓋然性が認められました。
②高齢者の兼業主婦の場合、逸失利益について相当基礎収入を低額な金額として認定される例も少なくありません。しかしながら、本件のようにシルバー人材センターなどを通じた就労であっても、しっかりと継続してお仕事を続けれ来られた方の例であれば、これらを主婦としての家事労働と合わせて主張することで、本件のように高齢者としては相当高額な逸失利益の賠償が見込まれるものと言えます。
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