高次脳3級男児について日額5,000円・父母67歳以降日額1万円として総額4,900万円以上の将来介護料が認められた事例
千葉地方裁判所管内
■高次脳機能障害(判例144)
■後遺障害等級:3級 確定年:2015年和解
■千葉地方裁判所管内
被害者の状況
①8歳・男児(小学校)
受傷時8歳・固定時10歳 男性
横断歩道上を横断していた被害者に、交差点内に時速約40kmで直進してきた加害車両が衝突した
高次脳機能障害3級
認められた主な損害費目
将来介護費 |
約4,900万円 |
---|---|
逸失利益 |
約6,500万円 |
傷害慰謝料 |
約350万円 |
後遺障害慰謝料 |
約2,000万円 |
その他 |
約1,050万円 |
損害総額 |
約1億4,800万円 |
損害填補(任意保険) |
-約660万円 |
損害填補(自賠責)(※2) |
-約2,220万円 |
調整金(※1) |
約2,310万円 |
近親者慰謝料 |
約470万円 |
総合計額 |
約1億4,700万円 |
※1遅延損害金及び弁護士費用相当額を含む
※2訴外獲得の自賠責保険金約2,220万円と合わせて、約1億6,920万円での解決となった。
詳細
加害者の主張
①事故前から性格変化やアスペルガー症候群の既往がありこれらの症状と同種の症状が事故後の状況でも確認されていることから影響を与えているとして20~30%の素因減額を主張。
②介助の声かけが必要な場面は限定的であるとして将来介護費用は日額2,500円を超えることはないと主張。
裁判所の判断
①素因減額が認められるための要件を被告主張が充足していないことを指摘するとともに、アスペルガー症候群に関しての詳細な知見、小学校入学前の生活状況などを丁寧に主張立証し、幼稚園入園前には相当程度問題行動は改善されており、少なくとも小学校の初めころには、補助の必要はないと教諭からも指摘されていたことなどを証拠に基づいて詳細に立証した結果、裁判所も被告において素因減額は立証できていないとして加害者主張を斥け、素因減額を行わなかった。
②介護の内容・程度に関して、当方からは被害男児に生じている具体的な障害の状況をカルテ記載や聴取内容からかなり詳細に適示し、これに伴う声かけや見守りといった看視的介護の労力が相当重たいことを主張立証した。また近親者が67歳以降は職業介護人による介護も必須となることを主張した。その結果、裁判所和解案でも、被告の日額2,500円を超えないとの主張を斥け、介護料は日額5,000円、近親者67歳以降は日額1万円を認めた。
当事務所のコメント
①素因減額とは、事故によって生じた後遺障害について同種の既往症(事故前からの障害やお怪我など)が存在し、かつ現在の後遺障害に対して影響を与えている場合、損害賠償の公平な算定の観点から、賠償金額について一定割合の減額を行うべきという考え方です。本件でも、確かに被害者には精神系統の既往症がありましたが、被告はその症状が類似していることを指摘するだけでした。当方からは、既往症についての詳しい文献や症例についてもしっかりと調査して主張した上で、事故までの回復過程についても小学校の担任の先生からもお話をお伺いするなどして状況を明らかにしました。これによって裁判所においても、既往症が今回の後遺障害に影響を与えていないとの認定を行いました。
②高次脳機能障害は、一見すると身体的介護が必要な場面が少なく、介護の労力を過小評価されがちです。しかしながら、判断力低下や感情コントロールの低下は、いつ問題につながるか不明瞭であるがゆえに、見守りをするご家族の精神的・身体的負担は一般的な介護の負担に匹敵するものと考えられます。当事務所では多くの高次脳機能障害の被害者の方の賠償問題について、介護の必要性を立証し、介護料の認定を獲得してきた豊富な経験があります。本件でも、裁判の上で重要なポイントを押さえて、緻密に具体的な障害の内容や程度、生活状況を立証することで、加害者側の非常に廉価な介護日額の主張を斥けることができました。
- 引用 -
高次脳3級男児について日額5,000円・父母67歳以降日額1万円として総額4,900万円以上の将来介護料が認められた事例