高次脳機能障害2級、控訴で平均賃金と介護料|交通事故 弁護士
一審 京都地裁管内 二審 大阪高裁
■高次脳機能障害(判例084)
■後遺障害等級:2級 確定年:2009年
■一審 京都地裁管内 二審 大阪高裁
被害者の状況
①28歳・女性(当時無職・家事手伝い)
② 原告が自転車で下り坂の青信号交差点を横断中、対向左折する被告車両が衝突
③ 脳挫傷による高次脳機能障害 2級
④ 被害者には物忘れや自発性の低下のほか、家族に暴力をふるう、自殺未遂をするなど、人格障害による他害行為や、自殺願望、社会的迷惑行為などの異常行動が著しく現れていた。投薬で抑制していたものの、常に看視(監視)と声掛けが欠かせず、家族は崩壊寸前の状態だった。
認められた主な損害費目
将来介護料 |
約5,470万円 |
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逸失利益 |
約5,900万円 |
傷害慰謝料 |
約240万円 |
後遺障害慰謝料 |
約2,400万円 |
その他 |
約530万円 |
損害額 |
約1億4,540万円 |
過失5%控除後損害額 |
約1億3,820万円 |
既払控除(任意) |
-約90万円 |
既払控除(自賠責) |
-約3,000万円 |
確定遅延損害金 |
約980万円 |
弁護士費用 |
約800万円 |
判決額 |
約1億2,510万円 |
※判決額の遅延損害金は別途 | |
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近親者慰謝料 |
約470万円 |
弁護士費用 |
約40万円 |
近親者慰謝料計 |
約510万円 |
詳細
本件の問題点
①被害者は大学を卒業した後、一度は公務員の職に就いていたが、その後退職し、自己実現のためにアルバイトや契約社員として働きながら勉強を重ねていた。事故当時は、病気療養中の家族にかわって家事をする必要があったため、無職だった。
②こうした状況につき、一審判決では逸失利益の基礎収入を女性平均賃金の70%(約4,100万円)とした。
③将来介護料については、薬物で症状を抑制し、施設入所前提の日額5,000円(約3,400万円) という認定をされていた。
④当事務所は、逸失利益と将来介護料を争って地裁判決の事実認定を是正させるべく控訴した。
高等裁判所の判断
①将来介護料について当事務所は、「投薬により他害行為・自害行為は収まっているものの、薬で本人の意志を抑制した状態で施設や病院に入所させることは、自己決定権を抑制し、憲法上の幸福追求権や居住・移転の自由を侵害するものだ」と主張。
②基礎収入については、若年者の逸失利益について裁判所の共同提言がなされており、本件被害者は症状固定時29歳で同提言に該当すること、さらに自己実現のためにアルバイトなどをしながら勉強する時間を割いていたこと、家族が病気療養のため原告が家事をせざるをえなかったことなど、やむを得ない事情で無職であったことをこまかく主張した。
③その結果、高裁は当事務所の主張を採用し、
・自宅介護を前提に介護日額/8,000円(約5,470万円)
・基礎収入/女子平均賃金年額350万円を使用(約5,900万円)
・総損害額約1億4,540万円(過失5%、既払い控除後、約1億2,510万円)、及び近親者慰謝料約510万円
の支払いを認めた。
④結果的に賠償額は一審判決の約1.5倍の金額にアップし、約6年(約30%)の延滞利息が別途追加された。
当事務所のコメント
①高次脳2級=随時介護=将来介護料日額数千円』という定式ではなく、被害者の障害状況や介護の負担の程度に応じて、注意、看視、声かけ等の常時介護が必要かどうか、常に検討が必要である。本件は2級でありながら日額8,000円を認めた高裁判決である、立証の成功であると言える。このような立証は等級を問わず、見守り介護が必要な高次脳機能障害者全てにあてはまる課題といえるだろう。
②逸失利益についても、地裁判決を変更させた画期的判決である。