職場復帰で等級下げるべきとの被告主張を排除|高次脳|交通事故
横浜地裁管内 (和解)
■高次脳機能障害(判例062)
■後遺障害等級:7級 確定年:2010年
■横浜地裁管内 (和解)
被害者の状況
①35歳・男性(会社員)
② ジョギングをしながら通勤中、信号のない交差点を一時停止側から横断しようとしたところ、右方からの普通貨物車と衝突。
③ 脳挫傷による高次脳機能障害7級
④ 7級の高次脳機能障害を負いながらも、被害者は事故後、なんとか職場復帰を果たしていた。
認められた主な損害費目
逸失利益 |
約5,000万円 |
---|---|
休業損害 |
約280万円 |
障害慰謝料 |
約250万円 |
後遺障害慰謝料 |
約1,000万円 |
その他 |
約270万円 |
計 |
約6,800万円 |
過失25%控除後損害額 |
約5,050万円 |
調整金 |
約940万円 |
総計 |
約5,990万円 |
既払控除(任意) |
-約640万円 |
既払控除(自賠責) |
-約1,050万円 |
最終金額 |
約4,300万円 |
詳細
加害者の主張
①職場復帰を果たし仕事を継続しているので、7級ではなく9級相当が妥当。
②労働能力喪失率はもっと低く見積もるべきである。
裁判所の判断
①本人は職場復帰したものの、自宅に仕事を持ち帰るなど従来の3~4割増しの労働をし、雇用を維持するために相当の努力をしていた。当事務所が被害者とその家族に詳しくヒアリングを行ったところ、それでも仕事の評価はかなり低下しており、職場も事故の事情を汲んで寛大な理解を示してくれていたことがわかった。
②厳しい現実を本人と家族の陳述書によって詳細に立証したところ、裁判所はその主張を全面的に認め、和解案には「労働能力喪失率を低く認定することには慎重であるべきであろうと思われる」、つまり、原告の高次脳機能障害が就労に影響していないとは言えないという意味の具体的な文言が明記され、こちらの主張通り7級での逸失利益が認められ、約5000万円という高額な逸失利益を含む、計6800万円の賠償額となった。
③和解の調整金として高額の900万円(3割以上)が追加されたため、被害者には結果的に弁護士費用の負担は生じなかった。当事務所の努力が裁判所に高く評価された結果といえる。
当事務所のコメント
①高次脳を負った多くの被害者は、職場復帰を果たしてからも大変な苦労を強いられている。復職している点に付け込んだ被告側の一方的な主張に決して屈することなく、現実の過酷さと周囲の理解や協力についてしっかりと主張することが大切である。
②被害者側の立証としては、家族に加え、職場の上司からの陳述書が必要となるので要注意。